決して本業から道を踏み外さない

次に、冷静な2タイプについてお話しします。冷静なタイプはリターンよりもリスクが見えます。物事の悪い面がよく見えます。よってリスクを嫌うので、イケイケどんどんのタイプからは鬱陶しがられる存在でもあります。でも、ひとたび有事に陥れば、「そんなに深くまで考えていたのか」と評価が逆転する可能性がある。

それを土台に、「冷静で主体的な人間」について考えます。

こちらは、頭がずば抜けてキレるエリート官僚タイプです。中央集権的なスタイルを取りながら、現場に自分の意向が届いているかを気にしています。

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏がこのタイプでしょうか。世界規模の新市場を開拓する企業買収(M&A)を繰り返しながらも、本業から道を踏み外すことはほぼありません。それは、どこまでも会社を膨張させていく孫さんや、メーカーから通信、航空へと経営手腕を発揮した稲盛さんとは対照的です。冷静に市場分析してリスクを最小限に抑える。まさに、主体的かつ冷静なリーダーです。組織にとっては最も手堅く、またライバルとしては最も手強い相手でしょう。

仮説と検証で常識を覆す

最後の「冷静で受動的な人間」は、とてもおもしろいタイプですね。こういった方が、経営者として優れているということを、意外に思う方が多いかもしれません。本来、このタイプは、観察眼が鋭く、研究者に多い。大きな一発逆転を狙うというよりも、組織に所属していて、コツコツと地道な研究を続けて、確実によいものをお届けしようとする人です。年を経るごとに研究成果が加速度的に増える、大器晩成型です。

セブン&アイHD会長兼CEOにして、流通王の鈴木敏文氏はまさにこのタイプではないでしょうか。鈴木さんのデータ分析に基づいたマーケティング手腕はまさに研究者のそれに近いですよね。

セブン&アイグループでは、毎週日本全国から店長を集めて、鈴木さんが経営理論についての講義をされています。大学の講義のようですね。その店長たちは、その理論にもとづいて各店で実践をしていきます。

鈴木さんのお話の中で「夏場の24℃と冬場の24℃」という有名な逸話があるそうです。データを仔細に眺め、同じ24℃でも真夏には涼しく感じるので、おでんが売れる、逆に冬場は暖かいと感じるのだからアイスクリームが売れると看破して、逆転の発想で成功を呼びました。夏におでんが売れるわけがない、冬にアイスクリームが売れるわけがないという、これまでの常識を、仮説と検証を繰り返すことで、覆したわけです。冷静な分析能力と、自分はお客さんから答えをもらうんだという認識は、鈴木さんが最強のマーケッターと呼ばれる所以です。