滋賀工場のスタンダードを世界へ

そのための意識改革の手始めとして、彼女がチームリーダー格の社員に指示したのは、3年に1度のアセスメントへの対応を現場の担当者自身が英語で行うことだった。滋賀工場には海外からの視察も多く、英語を使う機会も多い。これまではマネジメント側の社員が対応していたが、それを工場職のリーダーに任せていくことで、滋賀工場がグローバルな拠点であることをより際立たせよう、というわけだ。

もともと米国の会社であるP&Gでは英語が社内公用語である。滋賀工場にも希望者が英語を学べる制度があり、高木さんは視察時などに英語での説明が必要になりそうなスタッフ、また、将来のリーダー候補の若手を選び出して講義のクラスに入ってもらった。

「アセスメントの際には、約40人のスタッフ全員に英語でプレゼンをしてもらいました。アセッサーが来る日が近づくと、みんな必死になって自分の持ち場の説明を練習していましたね。当日は緊張していたけれど、終わった後は確実に自信が付いたと思います」

アセスメントは2日間にわたって行われ、食堂に全従業員を集めて結果の報告がなされた。合格したことが伝えられると、みなが手を取り合って喜びを分かち合ったという。

フェーズ4という世界最高の目標を達成しているからこそ、初めて挑戦できることがある。高木さんが掲げる滋賀工場における次なる目標の一つは、その挑戦を新たなモチベーションへと変える試みを次々に発案し、滋賀で働く従業員が世界中に点在するP&Gのどの工場に行っても能力を発揮できるようにすることでもある。

「P&Gという会社には、新しいことに絶えず挑戦させてくれる文化があります。チャレンジが目の前にあると頑張り、達成できた嬉しさが次のチャレンジへとつながっていく。私自身、そのようにしてキャリアをつくってきたという実感がある」と彼女は続ける。

「その循環を滋賀工場でも実現したいんです。具体的には滋賀工場で働く社員の一人ひとりに、フェーズ4の工場としてグローバルを牽引する視点を持たせること。そして、私たちのスタンダードが他の世界中の工場に伝播していく滋賀モデルをつくること。今後はその実現を重要なミッションの一つと捉え、個々の社員の目標に落とし込んでいく予定です」

(水野真澄=撮影)
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