なぜ「低コスト」は強力な武器なのか
勝利の拡大を考えるとき、「低コスト」の体制は基本的に有利だとわかります。さらに管理する地理的な範囲が拡大しても、コストが上昇しないこともまた重要です。
三国志時代の英雄、曹操は、屯田制度を敷いたことで食糧生産の拡大に成功しますが、食糧が敵陣営より豊富にあったことが、彼の成功の原動力の一つとなりました。軍隊の食べ物を確保するために苦労せず、広域の戦闘に集中できたからです。曹操が中国南部を除くほとんどの地域を制覇したことからも、過去、習慣的に当たり前だと認めていたコストの削減を可能にすると、常識を超えた勢力拡大が可能になることがわかります。
「敵地で調達した穀物一鐘は自国から運んだ穀物の二十鐘分に相当し、敵地で調達した飼料一石は自国から運んだ資料の二十石に相当するのだ」
もし「時間」と「距離」のコストを打ち消すことができるなら、どんな効果やメリットがあるのでしょうか。新たな行動を起こすとき、従来の事業の半分のコストでできる。勝利の規模を拡大しながら、新たな挑戦を途切れなく続けていくことが可能になるはずです。
ちなみに、低コスト化は単純なコスト削減以外でも達成が可能です。
日持ちがしない生菓子の「ういろう」を、昭和43年に名古屋の企業が保存する包装方法を開発しました。青柳総本家はこれによりお土産用の需要を爆発的に増やします。本来、数日で痛む生菓子の「時間」のネガティブな要素を打ち消す対策となったのです。
距離に関して、世界中で愛されている清涼飲料水コカ・コーラの事例。
米国アトランタの本社から、特別調合された原液が世界中に輸送されており、その原液を元に、各国の工場でボトリングをしているのです。当然ですが、輸送コストは格段に安く、製品のフレッシュさも保たれます。これは「距離」のネガティブな要素を打ち消す対策となっています。
「時間」と「距離」が生み出すコストをどう削減するか。このアイデアを絞ると、ビジネスの活動範囲は大きく広げることができるのです。