駅前立地に特化したビジネスホテル、会員制によるキャッシュバックといった独自の手法で、快進撃を続けるアパグループ。元谷外志雄代表は創業の頃から「ランチェスターの法則」を信奉し、経営戦略にも生かしているという――。
これからの日本を背負い、指導的立場に立つ人材を育てるため、「勝兵塾」を主催しています。名前の由来は孫子の「勝兵は先ず勝ちて、而る後に戦いを求む」(勝利を収める者は十分な勝算を得てから戦いを挑む)から。もともと活字好きの小学生でしたが、ビジネスの世界に入ってからは、『孫子』や『君主論』を愛読してきました。その後出合ったのが、田岡信夫氏が書いたランチェスターの解説書です。
ランチェスターはイギリスのエンジニアで、軍事戦略における損害量計算から、「ランチェスターの法則」という数理モデルを導き出します。この法則は第2次大戦中、米軍の上陸作戦や基地確保の戦略として、重宝されました。それを企業の経営管理やマーケティング戦略に応用し、独自のハウツーとしてまとめたのが田岡氏です。
当時の私は会社を立ち上げてしばらく経ったころ。事業計画をあれこれ考えていた時期で、視点の斬新さに惹かれて、貪るように読みました。『孫子』や『君主論』は、戦略書としてとても優れていますが、理論が中心。経営戦略として実践するなら、ランチェスター本のほうが即戦力になるでしょう。
西側から攻めて金沢市を制覇!
ランチェスター本は、実際にアパグループの経営戦略にも役立っています。その1つが「西側拠点説」です。
石川県の小松市で注文住宅販売会社を創業した後、私は金沢市の攻略に打って出ました。最初の支店を開設したのは、金沢市の西部。日本の天気は西から東へ変わっていき、物流のベクトルも西から東へ動いていった。だから西側へ西側へと点を打って包囲陣形をつくるのが日本では成功しやすい、と田岡氏の本に書かれていたのです。