変革を積み重ねて体系化された経営理念
山名新体制発足から1カ月後の5月、新中期経営計画「TRANSFORM2016」と共に体系化された経営理念(新フィロソフィー)がリリースされた。経営理念の「新しい価値の創造」は自社の存在理由、「グローバル社会から支持され、必要とされる企業」「足腰のしっかりした、進化し続けるイノベーション企業」は目指す企業像を示す経営ビジョン、「Giving Shape to Ideas」はお客様への約束として位置づけられている。そして新たに「6つのバリュー」が自らが拠って立つ価値基準として導入された。全世界に4万人いる社員一人ひとりが、指示待ちではなく、能動的にスピーディに動けるようになるための前提として共有していくべきものとされている。山名の重視する「最後までやりきる実行力」を支える大前提となるものだ。
新フィロソフィーとしてまとめられたキーワードの中には、これまで既に導入されていたものもある。「新しい価値の創造」は、2003年の統合時に新会社の理念として定められた。また、「Giving Shape to Ideas」は2011年にコミュニケーション・メッセージとして導入されたものだ。
こうしたキーワードが相次いで導入された背景には、統合後の同社が乗り越えてきた幾多の試練がある。歴史ある2つの会社が1つの会社として融合するだけでも大きなチャレンジだが、統合の3年後に下した写真関連事業からの撤退は、苦渋の決断だった。一般消費者向けのB to Cビジネスを捨て、情報機器を中心としたB to Bビジネスへと事業構造の転換を進めていく過程で、それぞれの局面ごとに出されたメッセージの裏側にはどんな意図があったのか。統合会社としての出自を持つ同社の弛まぬ変革の積み重ねを辿りながら、経営において理念の果たしてきた役割を見ていきたい。