正月に入った社長からのメール

契約成立に古荘(右)は「本気度が伝わったのかなと思っています」。当の水谷社長は、「メーカーの方々の目標値を超すことが、僕らの信頼度であり価値。名古屋で一番売らないと意味がない」と断じた。

昨年12月、柳橋ビアガーデンのビールの契約更改時期が迫っていた。古荘は水谷をお台場のサントリー本社に招いて、渾身のプレゼンテーションを行った。何としても水谷の心を動かさなくてはならなかった。

「他社のプレゼンが気になって仕方ないので、社長に電話で内容を伺って、宿題をいただきました」

名古屋に戻って、もう一度。

「他社を超えるもの、超えるものって、少しでも満足していただける内容にしようと思ったのですが……」

水谷の納得は得られず、名古屋でさらにもう一度。水谷は年末に返事をすると約束したが、返事の中身は「まだ悩んでいます」だった。

明けて、今年1月2日。古荘は俎板の上の鯉の心境で、実家のある神戸・三ノ宮の中華街で家族と食事をともにしていた。そこへ突然、古荘の携帯に水谷からショートメールが入った。

<明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします>

「今年もって、どういう意味だろう」と古荘が首を傾げる暇もなく2通目が。

<サントリーさんとお取り組みしようと決断しました>

都合3回のプレゼンを通して、水谷のニーズを完璧に聞き出した古荘、執念の営業成果だった。古荘はあたりかまわずガッツポーズを決めた。

「もう嬉しすぎて、嬉しすぎて」

古荘はそのメールを、今でも大切に保存している。(文中敬称略)

(永井 浩、石橋素幸、山口典利、村上庄吾=撮影)
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