世界最高峰のプレミアムビールを
毎年漸減を続けるビール類市場とは対照的に、増加傾向が続く「プレミアムビール市場」――この現象の中心には、サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ(プレモル)」がある。2003年の発売以来、いまだ右肩上がりの成長を続ける怪物商品。今年の1~6月も対前年比103.2%と好調で、サントリーのシェアを過去最高の15.5%に押し上げている。
今夏は「香るプレミアム」という期間限定のエクステンション(拡大版)商品も従え、新規参入組を迎え撃つ。サントリー酒類常務取締役・ビール事業本部長の水谷徹にその戦略を聞いた。
「お客様から『プレモルはコクと香りを楽しめますね』という声を非常に多く頂戴してきました。昨年の秋口に『コクのブレンド』を出しましたので、じゃあ今年は『香る』で夏らしい香りに挑戦してみようと考えたわけです」
「香るプレミアム」を手にしたユーザーを誘導して「プレモルのお客様を増やす」(水谷)のがその狙いだという。プレミアムビール市場で勝負する「本命」は、あくまでも「ザ・プレミアム・モルツ」なのである。
「ビールだけでなく、いろいろなものがプレミアムを名乗るようになってきたので、プレミアムを明確に定義しなくてはならないという気持ちがありますね。値段が高いだけでなく、内実を伴っていなければならないと」
では、サントリーが考える「プレミアム」という称号のプレミアムたる内実とは何か。まずは、最高級の原料と最高級のものづくりだと水谷は言う。香るプレミアムも当然この2つをクリアしている。だが、プレミアムを名乗るためには、もう一つ、欠くべからざる要素があるというのだ。
「それは、情熱です。いい原料を使って、いい造り方だから値段が高いというだけではなく、そこにメーカーの情熱、思いが込もっていなければプレミアムとは呼べない。プレモルは世界最高峰のプレミアムビールを造りたいという思いを込めて、醸造家が大変な緊張感を持って造ってきたビールです。その思いが伝わらなければ、お客様に納得していただけないと考えています」
5月下旬、サントリーの「情熱や思いを伝える場」の一つとして六本木ヒルズで開催されたイベント、「ザ・プレミアムビールヒルズ」では、バーテンは全員、社員が務めたという。
「社員が直接お客様に語ることが重要だと考えています。メーカーの人間が直接ものづくりへの思いを語らなければ何も伝わりませんよ」
サントリーの“プレモル愛”が十分に伝わってくる。