今、活況を呈している数少ないカテゴリー「プレミアムビール」。
価格を高めに設定した高付加価値の「プレミアムビール」。サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」が主導し、サッポロ「ヱビスビール」が鎮座するこの市場に、昨年からアサヒビール、今年はキリンビールが新たに参入し、ギフトを中心に苛烈な販売競争が始まっている。
ただ、一様に“プレミアム”を名乗ってはいても、各社が持つバックグラウンドはおのおの異なる。大手4社の営業マンたちの奮闘ぶりを主眼にその違いをレポートする。
生まれたときから「プレミアム」
東京・恵比寿。サッポロビールの本社地下に、「ヱビスビール記念館」という施設がある。入り口の巨大な金ヱビスの缶を横目に中に入ると、床に象られた巨大なヱビスのマークとロゴの向こうに金色の大きなタンク。茶を基調とした瀟洒な空間である。
サッポロビールの時松浩取締役・営業本部長の案内で、ヱビスビールの誕生から現在までを紹介するヱビスギャラリーを見学させてもらった。
1890年に生産が開始されたヱビスビール(当初は恵比寿麦酒)はドイツのビール純粋令(ビールづくりには麦芽とホップと酵母と水しか使ってはいけないという法律)にのっとって造られた麦芽100%ビールであり、すでに1900年にパリ万博で金賞を受賞している。時松が「ヱビスはきのう、今日生まれたプレミアムビールではありません」というのも、頷ける話だ。
展示品の中に夏目漱石の小説『210日』が並べてある。これは、登場人物が「ビールはござりませんばってん、恵比寿ならござります」と語る一節があるからだ。
サッポロビールにとってのプレミアムとは、いったい何なのか。