新しい市場をつくるためにはどうすればいいのか。ライターの栗下直也さんは「新たな問題設定を作り出すことが大事ではないか。サントリーウエルネスは、徹底した聞き取りから中高年男性が抱える問題を感じ取り、男性用スキンケア『VARON(ヴァロン)』を生み出し、ヒットさせた」という――。
サントリーウエルネスの西山さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
サントリーウエルネスの西山さん

オジサンだって本当はスキンケアを使いたい

男性の身だしなみへの意識は年々高まっている。それも、制汗剤、汗拭きシートなど一時的なにおい対策ではなく、より根本的なところからどうにかしたい兆しもみえる。象徴的なのがメンズ整肌料市場の動きだ。調査会社の富士経済の調べによると、2024年の国内市場見込みは23年比6.4%増の314億円に上る。

おそらく、皆さんの中には、「美容に関心を持つ若い男性が増えているだけでは」と思われた方が多いだろう。確かに若い男性が化粧水などでスキンケアするのは珍しくない時代だが、同市場の伸びをけん引しているのは実は40~70代向け商品なのだ。

今回は、男性スキンケア(保湿ケアカテゴリー)市場のシェアトップ(金額ベース)、サントリーウエルネスの中高年向けスキンケア「VARON(ヴァロン)」シリーズ。

「VARON」は22年3月に発売。1本で化粧水、美容液、クリームの役割を果たすオールインワン商品である点などが支持され、販路がほぼ通信販売にもかかわらず、23年の売上高は30億円に達した。これは期初販売計画の23億円を大きく上回る。

「中高年男性向けにスキンケア商品を出したらどうだろうか」。同社では以前からそうした声はあったが、実際のプロジェクトとしては動き出さなかった。

若者ならばともかく中高年の男性がスキンケア商品を買うのだろうか。

肌を気にしていたとしてもお金を払ってまでケアをするのだろうか。

誰もが抱く疑問だろう。