サントリーだからできたオールインワン

商品化に際して強く意識したのは「シンプル」さだ。

ミドル・シニア男性はスキンケアとは無縁の生活を送っている人が大半。「外見をどうにかしたい」と考えていても、化粧水、美容液、クリームの3本をいきなり使わなければならないとなると一気にハードルは高くなる。

実際、発売前のモニター調査でも「面倒だと使わないという声が多かった」(西山氏)。そこで、サントリーウエルネスでは特許にもなっている化粧水、美容液、クリームの成分が時間差で浸透する技術(「三層時間差浸透技術」)を使って、1本で3つの役割を果たすオールインワンタイプを実現した。市場を見渡しても、中高年向けのオールインワンタイプ商品はほとんどなかった。

また、ウイスキー樽材エキスを同社の商品に始めて採用した。サントリーグループではウイスキーの樽につかう木材から染み出るポリフェノールの成分が肌にプラスの効果があることを10年前に突き止めていた。

「VARONプロジェクトチームには研究所の人もいて自由闊達に意見が飛び交って、コンセプトをみんなで固めていきました。その点でもサントリーらしい商品です」

撮影=プレジデントオンライン編集部
使用した約9割の方が10日間で効果を実感したという。

意外なサンプルの配り先

良いものがつくれてもどう売るかが最も重要になる。

同社は通販がメインなので、ドラッグストアなど店頭で手に取ってもらい、効果を試してもらうのは難しい。

西山氏は「とりあえず口コミをつくろうと考えました」と振り返る。発売(22年3月16日)の2週間ほど前から、ギフトボックスを配布。ギフトボックスには10日間使用できるミニボトル(約20ミリリットル)とサンプルパウチが2包入っている。

このギフトボックスは、発売時に一気に数万セット配っている。ここまで全社を巻き込んだサンプリングは珍しいという。

「方々に配りまくればいいという考えではなく、『VARON』は本当に良いと思った人に広めてもらいたかった。ファンをどんどんつくるイメージです」と意図を語る。

そのために、まず力を入れたのが社内でのファンづくりだ。

「役員ひとりひとりに時間をもらい、まずは試してくださいとお願いしました。体感してもらって、『これ、いいね』と思ってもらえた役員には会食などでお会いする方への手土産として配ってもらいました」

また、サントリーグループは酒類メーカーだけにルート営業でクラブなど夜の店も回る。お店のママがお客さんに手渡すお土産として提案して配布してもらったところ、「今では向こうから追加のリクエストがくるほど好評です」(同)