第3のポイントは「相手を欺く」コンシート技法

こんな自分を、常に発信し続けていくと、相手からの信用と好意が集まり、職場の人間関係がまず安定します。その信頼関係の上に立って、さらにもう一段階上の技法を使ってみましょう。

人間は元々不完全なものであり、「unfinished(未完)」であるのが、その本質です。そのため、いつもテキパキ仕事ができて、手際もよく賢いイメージをフレームに入れていると、相手にまったく隙を与えず、緊張させてしまうことがあります。特に、同期入社の同性の同僚同士や、お互いに大学トップクラスのエリート同士などの場合、起こりやすい現象ですね。

ここで、次なる「フレーム理論」の出番です。

何かの拍子に随分とおっちょこちょいで失敗をして頭をかいていたり、難問を目前に悩んでいる。そんなあなたをくっきりと見せることが、人間的魅力の演出につながります。

いつもの「できすぎる」イメージを意図的に外して見せる「コンシート技法」(=欺き)は、日頃は優れたイメージをフレームに入れている人が、自分以上にテキパキと有能な上司や「俺が1番」といった自己顕示欲求が強い自信家の上司、またこのタイプのクライアントに会うときにおすすめです。

ちょっと心細げな若い女性社員が、年上のうるさ型の男性上司に妙に気に入られるのも、この原理です。少し前に時の人となった理化学研究所の小保方晴子氏などは、わかりやすい例でしょう。

自分の長所と相手のニーズによって「フレーム」を決め、時に意表をついて相手を惹きつける「フレーム変え」をすること。この2つが職場で成功する自己アピールの決め手となります。

「人」を表す「person」という言葉と、「仮面」を表す「persona」は、語源を同じくします。人間はいくつもの仮面を持つわけです。これぞまさにパフォーマンス心理学の基本。強調するペルソナをフレームに入れるのです。

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自己アピールに有効な「フレーム理論」3つの基本

さて、ここでまとめてみましょう。

(1)自分の良いところをフレームに入れて強調する
(2)相手に応じてフレームを選択する
(3)フレームを変えることを恐れずに、時にはいつもと違うフレームで自分を見せて、相手をハッとさせる

この3つの「フレーム理論」の基本をしっかりと覚えれば、しっかりと自己アピールができます。

これらができたとして、あなたが発信したイメージに、相手が瞬時に惹きつけられたと仮定しましょう。その次の瞬間からまた、相手との会話は続きます。時に30分、数時間も話してから、相手はあなたを信用するかどうかを決めることもあります。1度の面談では足りず、再び会う機会を設けるといった状況も充分ありえます。