そうなると、「本当は何も決められない人」だとバレます。なんとかごましてきた姿とのギャップが大きければ大きいほど、相手の失望も大きく、うまくいかなくなってしまいます。

「信用を失う」とは、パフォーマンス心理学で言えば、自己表現の統一性がないこと。ありもしない能力をあるかのように見せることは、「フレーム理論」とはかけ離れているのです。

では「フレーム」を決めるときに、何が決定的な依りどころとなるのでしょうか? まずは、自分の性格、長所、売りをとことん確認することです。そして、「これが売りだ!」というイメージを常に強調して見せることができるように準備しておきます。

先ほど例に挙げた協調性が第1の長所であっても、今は判断力をアピールするならば、スーツやシャツの選び方から髪形、メガネの形まで、シャープさが重要です。「見せたい自分」に徹底的に焦点を当てて表現していくことができる人が、リーダーになれるのです。実際、これまで私が直接会った多くのビジネストップは例外なく、皆一様にこれができています。

自分の売りとなる部分をよく分析して理解していれば、その売りをどのようにフレームに入れるかがわかります。自分の性格、実力、魅力を統合した売りを決めておきましょう。

相手のニーズに合わせてフレームを決定

続いて、どこをフレームに入れるかを決めるにあたっての作戦です。

あなたがフレーム用に選んだイメージが「相手のニーズに合っているかどうか」、これを忘れてはいけません。

例えば、景気変動や社会動向に合わせ、常に変化を求められる職場において、「のんびりおっとり型のゆるキャラ」といったイメージをフレームに入れ、雑談のときだけ周囲の注目を集めているようでは、間違いなく仕事も人間関係も失敗します。肝心なときに「今忙しいから、あっちに行ってて」といった扱いになってしまうでしょう。

では、職場では自分のどこをフレームに入れるか。持てる能力の中から、ニーズに最も合っているイメージを統一して発信していくことが大切です。

セールスマンとして、初めてのクライアントに提案しにいく場合もそうです。例えば、ご年配の資産家で話をよく聞いてから車を買いたいと思っている相手であれば、フレームに入れるのは、「テキパキ」ではだめです。落ち着いた物腰で、「親切」などといったイメージを入れることになります。

第1に、自分の長所と合っていること。第2に、相手のニーズに合わせること。これがフレームの決め手です。