いちばんの「ロイヤルカスタマー」は自分自身
シンガポール人の彼とバーでしばらく時間を過ごした後、急に彼は口を閉じました。そして景色をじっと見つめています。なぜか、話しかけてはいけないような気持ちになり、私も黙って景色を見ていました。
5分ほど過ぎて、彼が言いました。
「連れてきてくれて本当にありがとう。ここがシンガポールだなんて、ぼくには信じられない。こんな場所がシンガポールにあるんだね。いままで知らなかった」
それからしばらくして、彼が亡くなったという知らせを受けました。彼は、自分の病気と命が長くないということを知っていて、残された時間の中で、できることを精いっぱいしよう、一期一会を大切に、ベストをつくそうとしていたと後に人から聞かされました。
カペラシンガポールで彼と最後に会った時を思い返しながら、私の中で、彼の生き方と、シュルツさんの哲学がひとつにつながりました。
時間は有限であり、その出会いも、もしかしたら一生で一度きりのものかもしれない。そう考えれば、ためらいなくその瞬間を大事にし、最善をつくす気持ちが生まれてくるのではないでしょうか。
私たちは、お客様に対してロイヤルである前に、自分の信念に対してロイヤルであるべきです。自分に誇れるサービスを提供している限りにおいて、私たちは“Ladies and Gentlemen”であり、そのサービスは、“Ladies and Gentlemen”であるお客様の心に必ず届くものだと思っています。