コンピュータやロボットが人間の仕事を奪う時代

人工知能の世界的権威で未来予測者のレイ・カーツワイルさんが言う、人間を超える知性を持つ存在、「ポスト・ヒューマン」が、ここへきて急速に現実味を帯びてきています。たとえばアップル製品をつくる台湾企業、フォックスコン社では、中国工場において2015年には100万台の産業ロボットが人間50万人分の仕事を行うようになると言われています。

「コンピュータやロボットが、人間の仕事を奪う」、そんな時代が来ています。初期投資にかかる費用を差し引いても、記憶のミス、コンピュータの入力ミス、あるいは体力の限界がある人間よりロボットのほうに労働力として軍配が上がるケースも今後は増えていくでしょう。効率性重視の仕事は、いずれコンピュータやロボットに置き換えられる可能性がある。サービス分野にもロボットが参入している現実を、私たちは受け止めなければなりません。

われわれ人間にしかできない仕事とは

シュルツさんのサービス哲学、1. No Defect(欠点がない)2. Timeliness(お客様の望む時間通りに提供される)3. Caring(思いやり)のうち、1. のNo Defectと2. のTimelinessは、サービスにおいて、いずれコンピュータやロボットと競争したら、かなわないことかもしれません。

残るのはただひとつ、3. のCaring、思いやりです。これが、最後に人間に残される仕事ではないでしょうか。

ホルスト・シュルツ氏

9.11で、ほかのラグジュアリーホテルが経費削減のため花を一斉にカットした中、当時リッツ・カールトンの社長だったシュルツさんは、「花は人の気持ちを明るくさせる。こんな時こそ、花はカットしてはいけない」と、ふだんと変わりなくホテルに花を飾りました。

「気持ちが沈んだ時、私自身が何度となく妻とともに花を眺めて気持ちを晴らしたものです。経費削減は誰にでもできる。一時的に苦境に立ったとしても、解決策を考え、利益を上げるのがエキスパートでありリーダーの役割なのです」

「何も話さなくても、何もしなくても、ただ、そばにいてくれればいい。それだけで安心するから」

もし、お客様があなたにそう言ったとしたら、それは、人間であるあなたにしかできない、究極の「サービス」と言えるのではないでしょうか。