場の空気を一瞬で変えるオーラ
会った瞬間、その人の持つオーラに圧倒されてしまうということがあります。
「あの人が来ると、場がパッと華やかになる」「あの人がいると場がグッと引き締まる」、そんな風に言われる人がいます。
シュルツさんにはじめて会ったとき、そのオーラの強さに、体の芯に電気が走るような衝撃を受けました。その後もシュルツさんの前に立つ度、強いインパクトを受けます。いまは、私がシュルツさんから感じとるものは、「世界一のホテルをつくる」というその情熱なのだと理解しています。
これはシュルツさんが教えてくれたお話です。
戦後、あるアメリカ人の音楽家がドイツに渡り、ベルリン・フィル・ハーモニーで演奏することになりました。当時、ベルリン・フィルの指揮者はフルトヴェングラーさんでした。
活動を開始してまもなく、アメリカ人音楽家はインタビューを受け、「あのフルトヴェングラーさんのもとで演奏するのはどんな感じですか?」とインタビュアーに聞かれて次のように答えました。
「オーケストラでの初日、リハーサルの準備をしていた時のことです。私は次のリハーサルから演奏に加わるので、楽譜を見ながら流れてくる演奏を聴いていました。演奏を聴きながら、『こんな演奏は今まで聞いたことがない。本当に素晴らしい演奏だ。ここに私も加わって演奏するんだ』、そんな風に思っていたところ、ある瞬間から、急に演奏の音色が、それまで以上に素晴らしい、まるでこの世のものとは思えないほどの美しいものへと変わったのです。
私が顔をあげると、フルトヴェングラーさんが部屋に入ってきていたのです。オーケストラの誰もが、その音色こそ、フルトヴェングラーさんが期待しているものであるということをわかっていたのです」
シュルツさんは、このエピソードを話した後、こう続けました。
「私もフルトヴェングラーさんのように、ホテル経営には決して妥協を許しません。私の期待がいかに高いか、スタッフはみんなよくわかっています」