女性を活用するうえでマネジャーがやるべきこと
そのウェルチを「ローパフォーマーのリーダーには厳しく、育成すべき人には手厚い投資を惜しまないフェアな人」と評するのは日本マイクロソフト執行役人事本部長の佐藤千佳氏だ。新卒後日本の大手電機メーカーで9年間働き、その後ニューヨークに滞在。1996年にGEジャパンに入り、人事部門に15年間勤務した後、11年にマイクロソフトに移った。GEでは人事担当として6社の買収案件に関わる。
「買収合意する前から相手の会社や人材を分析し、GEの文化や仕組みをどのようにして説明していくのかというプランを立て、ゴーサインが出るとすぐに行動できるようにします。当然、摩擦も起こりますが、よい意味での突然変異というか人が成長していく過程を見るのは非常に楽しかったですね。普通ではないタフな環境を通して人は育つことを実感しました」
合併人事だけではなく、バラバラだったグループ企業の就業規則や人事制度を統一するプロジェクトにも参画し、グループ企業間を社員が異動する仕組みを構築した。
「トップ層の異動だけではなく、その人の将来の育成やビジネスの短期、中長期の目標を達成するために、どういう人をどのタイミングで動かすべきか、グループの人事と議論しながら決めます。ビジネス間をまたいだ人の育成の重要さを学びました」
そして自身も15年勤務したGEからマイクロソフトに移動する。正直不安もあったというが「GEで学んだことをどのように活かせるのか、チャレンジしたい気持ちもありました。移ってもできるというより、できないところに入って自分ががんばることで、GEで少し慣れてしまっている自分を成長させてくれるかもしれないという期待がありました」と語る。
安住を求めるのではなく、あえて自分を厳しい環境に置き、会社の中で変革を起こす、変化の中にいることが好きだと言う。「つらいこともあるとは思いますが、つらいことは逆にすごく自分が吸収できたということでもあり、時間が経つと一番懐かしい思い出に変わっていることが多い」と語る。
目下、精力的に取り組んでいるのが女性の活用などダイバーシティの推進だ。経営方針の一つに掲げ、社内に男女混成の3つのチームをつくり、様々な取り組みを実施している。
「ダイバーシティの推進には3つの柱が不可欠です。一つは在宅勤務などの制度面の改革、一つは多様な人材が多様な働き方ができることを支えるITを駆使したインフラ、最後がカルチャーです。いくら制度が充実し、ITが発達しても、なんとなくそれを使うことが許されないような職場の雰囲気などカルチャーを変えていくと、フレキシビリティが高まると思っています」
今後のビジネスの成長を考えたときに、女性の活躍抜きにはありえないことはもはや自明だ。3人が育ったGEは男女に関係なく、成長したいという意思を持つ人を徹底してサポートし、活躍と“学び”の場を提供することで本人の能力を最大限引き出すことに成功している。
そこから学ぶべきは、女性を活用するうえでマネジメント自身が当事者意識を持つことだ。「自分は女性ではないのでわからない」と逃げるのではなく、マネジャー自ら女性を育成するのだという強い自覚を持ち、やりたい仕事、なりたい自分を描かせ、実現するためのチャレンジブルな仕事など多様な選択肢を用意する。それを通じて能力の開花と成長を促すフォロワーの役割が今ほど期待されているときはない。