ところで昇進についてどう考えているのか。四方氏はマネジャーになっていない20代の後半に人事総務部長になりたいと思った。「なぜなら今の立場でどんなに一生懸命にがんばっても仕事の範囲や責任が限られてしまう。自分がやりたいと思うような仕事をするには責任と権限も与えられるポストに就くしかないと思った」からだという。もちろん、誰もが上昇志向の人間ばかりではない。

「周りにそんな話をしてもあまり共感を得られませんでしたね。20代の男女にとっては結婚とか違う職種に興味を持つとか出世以外の関心事がいっぱいあります。それは今でも同じ。バリバリがんばる人もいれば、出世はしたくない人、子供が小さいときはそっちに注力して、その後にがんばる人、あるいは病気を余儀なくされたり、親の介護で仕事に集中できない人など様々な事情や価値観を抱えて生きています。そういう人たちがいることを前提に仕組みをつくっていく必要があります」

それでも最近少し危惧しているのは、欧米や新興国の人に比べて「目立たなくてもいいから、そこそこ仕事をしたい」という考えを持つ日本人が多いこと。その考えには落とし穴があると社内でも常に言っている。

「昨日や一昨日と同じでよいと思っても、じつは同じではない。なぜなら後輩など下からがんばって追い上げてくる人が常に組織には存在するので、同じことをしていると相対的に落ちていくのです。出世はそこそこでよいと思っても、常に切磋琢磨して学び、自分自身に投資して成長していかなければ、“そこそこ”でいられなくなり、居場所を失ってしまうのが現実です」

GEで「変化を起こしていく楽しみを学んだ」と語るのは、コーチ・ジャパンのコーポレート・コミュニケーションズシニアディレクターの石田敦子氏だ。男女雇用機会均等法施行の1年前に総合商社に入社。3年勤務後スペインに1年間留学し、その後入ったPRエージェンシーでの経験で「広報」が彼女の天職となった。97年にGEの金融部門に入るが、当時は相次いで日本企業を買収するなど事業のスタート時期。内外の広報業務の立ち上げを1人でこなさなくてはならなかった。「それまでは外向けのパブリックリレーションの仕事が主でしたが、買収で増える社員にGEをいかに理解してもらうかというのが仕事の半分です。GEのカルチャーを伝道する仕事を通じて、インターナルコミュニケーションの重要さを知りました」