26歳のとき、GEの教育プログラムの日本での導入プロジェクトに自ら手を挙げて飛び込んだのをきっかけに人事の道に突き進んだ。29歳でGEの将来の人事リーダーを育てる早期選抜プログラムの試験に挑み、合格後渡米。2年間の座学と本社での経験を経て、31歳でGE横河メディカルシステム(現GEヘルスケア)の最年少マネジャーに昇進。36歳で取締役人事部門長に就任した。このキャリアは自分から手を挙げて築いたものだ。
「できれば人事のトップを経験したいと思い、たまたまGEの金融部門が買収した120人の小さな会社の人事責任者の募集に応募したのです。その後、550人規模の会社を買収し、私が引き継いで人事・総務部長になりました。それから古巣のメディカルの新社長から人事部長で迎えたいという話があったのです。会社は別に社内の人間を登用しなければいけないという義務はなく、社内、社外を含めてベストの人材を探す。私の場合も社内転職の形でやりたい仕事に就くために自ら手を挙げて動きました」
その後、GEを経てAIU保険の人事担当執行役員、マイクロソフトの執行役人事本部長と会社を移動しながらキャリアを積み上げてきた。転職の決め手は「自分にとってチャレンジする価値があるか、自分の経験が貢献できるか」の2つの基準で判断してきた。四方氏が最も得意とする分野は「経営者の視線で人を動かす戦略的人事」だ。
「私がいつも気をつけているのは社長と同じ目線を持ち、人事の立場からギアをチェンジすること。ビジネスの方向性が変われば、人事戦略も変わります。社員がどう変わらなければいけないのかを考える。新たな分野に打って出る場合、必要なスキルを持った人を育てるのか、違う血を外から入れるのか、そのための報酬の仕組みをどう変えるのかも考えないといけません。さらに社員の活躍を促すためにマネジャーが果たす役割を再定義し、時代遅れの仕組みを捨てつつ、組織や働き方の文化をつくっていく発想も必要です」
経営と人事は一体であり、二人三脚で動くものというのが持論。だが、戦略的人事の発想に立つ日本企業は「非常に少ない」と手厳しい。