女性の総合職採用は男性に比べて“狭き門”。このため多くの女性が一般職採用を強いられている。こうした採用慣行は、女性にとっても、企業にとってもマイナスなのではないか。日本総研の榎本久代氏と小島明子氏は「一般職から総合職へ転換する環境整備を進めるべきだ」と指摘する――。

大企業の一般職女性への“失礼”が目に余る

この数字にはがっかりさせられました。

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従業員数300人以上の企業における女性の「課長」相当職以上及び「係長」相当職以上の比率は、1割未満です(厚生労働省「2016年度 雇用均等基本調査」)。中小企業を含めた全体の女性管理職比率12%に比べると、大企業のそれが全体よりも低いことが指摘できます。

大企業で女性の管理職が増えない理由には、企業側のシステムにもさまざまな問題があります。その問題のひとつが「コース別雇用管理制度」の存在でしょう。新卒採用時に「一般職」「総合職」など、職種を選別するこの制度を従業員数1000人以上の企業の半数近くが実施しています(同上調査)。

▼一般職に占める女性割合は82.1%にもなる

通常、総合職は転勤があり基幹的業務に携わります。一方、一般職は転勤がなく定型的な業務を行います。将来、管理職として活躍するためには、総合職として入社をすることが求められます(運用の仕方は、企業によっても異なる場合もある)。

総合職採用者に占める女性割合は22.2%、一般職に占める女性割合は82.1%となっており、女性の多くは一般職に偏っています(厚生労働省「2014年 コース別雇用管理制度の実施・指導状況」)。さらに、総合職の採用倍率は、男性が30倍であるのに対して、女性43倍であり、総合職として採用されることは簡単なことではありません。

本稿では、個人へのインタビューも交え、女性の活躍を推進する上で、大企業を中心に導入されている「コース別雇用管理制度」が抱える課題に着目します。

1:一般職で入社した女性に成長の機会を与えない企業

勤続10年以上の一般職女性の中で「10年以上同じ部署に勤務している」人の割合は、47.0%に達することが明らかになっています(21世紀職業財団「2017年度『一般職』女性の意識とコース別雇用管理制度の課題に関する調査研究」)。ずっと同じ部署で働き続ける女性がこれほどたくさんいるのです。