最初は「ほんの数年のつもり」で入社した森島さん。上司から仕事の面白さを教えられ、それ以降は食品開発の一線にいるのが楽しくて仕方なかった。しかし新たに立ち上がった健康事業開発部に移ったとき、最大の壁が待っていた。

おっちょこちょいが生み出した失敗

森島さんが味の素に入社した1986年は、ちょうど男女雇用機会均等法が施行された年。事務職採用で配属先は調味料部だった。

「9時と13時と15時には男性社員にお茶出し。どの人がどの湯飲み、コーヒーカップなのかを覚えるのが最初の仕事でした」

味の素執行役員 食品事業本部 家庭用事業部長 森島千佳●1963年、滋賀県出身。86年、お茶の水女子大学文教育学部卒業後、味の素入社。90年に総合職に転換。調味料部、食品部などを経て、健康事業開発部で新事業の立ち上げに参画。2015年より執行役員。家庭用事業を担当。

90年に総合職に転換するまで一般職だったが、新人の頃から育ててもらった感覚がある。

「最初は、数年働けるかな? くらいの気持ちでしたが、上司から『どんなに売り上げが小さな商品でもいいから、その商品の社長だと思って仕事をしなさい』と言われ、火が付きました」

「味の素(R)」や「ほんだし(R)」などを扱う主力部門で、「スパイス10」という商品のプロダクトマネージャーとなって開発から採算管理までを担当し、仕事の面白さを味わった。その頃の失敗は「おっちょこちょい」の性格が生んだもの。開発中の「まろみ(R)」の試作品をレシピを検討する部署へ送るとき、1度ならず2度も違うものを送ってしまったのだ。

「試作品の数が多かったので、つい……。2回目は上司にクレームの手紙が来て、『気をつけなさい』とやんわり言われました」

当時の仕事で印象深いのは、「それいけ!アンパンマンふりかけ」の開発。会社がキャラクターものを手掛けるのは初めてのことだった。

「経営会議メンバーから『NHKのキャラクターじゃダメなの?』と言われ、説得が大変でした」