日々の生活のなかで、理不尽だと感じることはありませんか。法律の知識があれば、解決できるケースもあります。雑誌「プレジデント ウーマン」(2017年9月号)の特集「1時間でわかる法律相談」では、9つの身近なトラブルについて4人の専門家に相談しました。今回は「転勤辞令」について――。(全9回)
▼37歳、結婚したばかりの転勤辞令を撤回させたい!
転勤有りの総合職なので仕方がないとはいえ、「いま妊娠までされたら大変」とばかりに辞令が出ました。基本給が違うため、うちの会社では結婚を理由に総合職から一般職への変更はできません。辞令を拒否することはできないのでしょうか。それとも、いまからでも転職を考えたほうがいいのでしょうか。この年で転職には勇気がいります。

▼答えてくれたのは……一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会の方々
協会代表理事・FP 鬼塚眞子さん/弁護士 丸尾はるなさん/弁護士 山岸潤子さん/税理士 林 良子さん


会社には転勤させる権利がある

【山岸】入社のときに支店があること、転勤があることを理解して入社しているので、会社側が転勤させることができるのが原則です。ただ、それが権利乱用になる場合は差し止めや賠償請求ができます。どんなことが権利乱用になるかというと、動機や目的が業務以外のところにある場合。単に嫌いだとか、妊娠したからとか、するだろうからとか。それから、労働者に対して著しく不利益を与えるとき。だから、今回の場合は、会社側が口に出して「結婚してすぐ妊娠されても困るし」などと言っていたら権利乱用になるかもしれません。日本からアフリカの支店とか、それくらい極端に離されていなければ、一般論では会社に抗議するのは難しいですね。

【丸尾】ただ、結婚したばかりという事情も知っていて、おそらく夫の職業なども会社は知っているでしょう。その状況で、なぜ転勤!? ということであれば、悪意があるのではないでしょうか。事実上の退職勧奨として転勤辞令が使われるケースもありますから、ここは「異議あり」と上司に声をあげるべきなんじゃないかと思います。過去に、家庭の問題ごとをすべて背負っていて、転勤になったら会社を辞めなければならないという女性に対する転勤辞令を止めさせた事例もあります。