価格は通常、物件の近隣に住む人々の平均年収などをもとに理論値(の価格)が割り出されます。しかし同じエリアでの別のデベロッパーの販売価格や売れ行き状況によっては、「もう少し価格を上げても売れる」と判断し、より高い設定をする場合があります。それを業界では「新価格」と呼びます。
08年のリーマンショック前の不動産ミニバブル期には理論値より2~3割増の新価格がまかり通りました。しかし、そのバブルは崩壊し、デベロッパーは次々と倒産。不動産業界の株価と同時に物件の価格も下落しました。この株価と物件価格の乱高下は消費税が3%から5%に上昇した直後にも見られ、この四半世紀の間で二度も大きな山と谷を見てきたことになります(図)。
その経験から言っても、今回の消費税アップ前の「山」のあとには、やはり谷がやってくるのではないか、と私は読んでいます。とすれば、いくつかのデベロッパーは倒産し、物件価格は再び下がり始める。要するに不動産業界の株価が下がり始めたときこそ、「買い」と言えるのです。
考えれば不動産業界にとってこの先いいニュースはあまりありません。人口が減少傾向にあるのに加え、現在の家購入世代である団塊ジュニア世代は将来に対する不安感からか住宅取得欲に乏しい。「住宅購入想定人口」は今後明らかに減少します。結局、不動産業界の株価が長期的にみて上がる要素は見当たらない。
より安く買いたいのなら、不動産市場がシュリンク(縮小)したときが狙い目ということになります。
立教大学卒業後、大手デベロッパーにてビル・マンション企画開発事業、都市開発事業に携わる。1996年独立し不動産と不動産投資コンサルティングを。著書に『家を買いたくなったら』など多数。