業者にとっては、家はいつも「売り時」
いつかマイホームを買おうと考えていた人が消費税引き上げをきっかけに動き始めているのは確かです。私のところに持ち込まれるマイホーム購入相談も、明らかに増えていますね。震災から1年以上経ってようやく物件が出回るようになってきましたし、まだ金利も低く、贈与の特例の終了とか仮設住宅の影響による建築資材値上がりとかいった話が耳に入ってきますから。
実際、1997年に3%から5%に引き上げられたときには駆け込み需要がありました。でも、その結果として高値づかみをした人が多かったのも事実です。
たとえば建物価格が1500万円だと、5%のときの消費税は単純計算で75万円ですが、10%になると倍額の150万円になってしまいます。でも、この75万円の負担増を惜しんだ結果、200万~300万円も割高な物件を買わされてしまったら意味がありません。通常なら業者は決算対策で年度末に値下げしますが、消費税引き上げ前は強気でセールスするものです。
巷に出回っている消費税引き上げ前後のシミュレーションの中にも、首をかしげてしまうものがありますね。物件価格にかかった消費税分を預貯金では払えないから、その分を借入額に上乗せをしたら数百万円も返済総額が増えてしまうといった試算を見たことがあります。そもそも、消費税分をローンに組み込んでまで無理に購入するのはナンセンスな話です。
消費税の引き上げが実施された後も税制優遇による国のバックアップがありますから、住宅の売り手側はそれをネタにして「今が買い時ですよ!」とアピールしてくるはずです。つまり、業者にとってはこれから先もずっと売り時が続くのではないでしょうか。
結局、今買うのが正解かどうかはその人のライフプランニング次第で、消費増税分だけ物件価格が上がるから損だとかいった単純な図式だけで説明できるものではありません。消費税よりも、むしろ大いに気にするべきなのは金利の動向でしょう。みんなが駆け込みで家を買うと、ほかにも新調した家具や引っ越し代などもかかってお金が動くので、それによって景気が刺激されて、金利が上がってくるというパターンのほうが怖いのです。