実力だけで評価されたい彼らは、たとえば「大型企画を通すには○○部長と△△部長への根回しが必要」といった不文律も合理性がなくくだらないと捉えがちです。
雑事にせよ、根回しにせよ、説得の仕方としては、相手を認めるところから入ります。「ほかの人が、気がついてもスルーするところによく目がいったね。問題意識を持つことは大事だよ」と褒めるのです。そのうえで、「でもくだらない不文律に敵愾心を燃やしてやりたい仕事ができなかったら、大損じゃないか」と諭すのです。
今の若手は「損をしたくない」という気持ちが強いので、損得を明確にするのは有効な話し方です。
組織に属すことで、自分の実力以上に大きな仕事ができる。理不尽と思うような不文律に従うことは、その看板料なのだとわからせるのです。潔癖症社員は理想や志を持っている人が多いですし、能力も高いので、自分のやりたいことと不文律の軽重を天秤にかけさせれば納得しやすいでしょう。
また、どんなにムダなものに思えても、何年も続いてきた不文律なら何かしらメリットがあるものです。それをあなた自身の言葉で説明することが大切です。部下に同調して「本当に意味のないルールだよな」などと言ってしまうのは最悪な上司と言えるでしょう。
最後に、潔癖症社員が失敗を犯したタイミングで説得する手も有効です。ミーティングが終わった後などに会議室の隅に呼んで、「今回のプロジェクトはあまりうまくいかなかったね。○○部長に根回ししなかったのがネックになったんじゃないかな」と話してみるのです。それでも納得がいかないと反論するなら、「じゃあ、この会社を辞めて自分の力で勝負してごらん」と突き放すしかないでしょう。私が転職した中にも不文律などなく本当に実力勝負の企業がありました。そういうところで仕事をすればいいのです。
東京大学大学院修了。経営コンサルティング会社や事業会社の経営企画部門を経て、事業再生型の投資ファンドに勤務。多くの企業に直接入り込み、再建・成長させてきた。