「損得で説明」が一番効く

どの会社にも不文律はあります。その会社にしか通用しない暗黙の了解なので会社案内にも就業規則にも載っていません。私も新卒でコンサルタント会社に入ったときは面食らったものです。新人だけに課される雑事が存在しました。

ゴルフのときは、家が遠いのに早朝に社長の家に車で迎えに行ったり、宴会を盛り上げるために全員分の芸を企画して休日に小物を買い出したりといった仕事です。それらをこなすかどうかも、上司からの評価につながっていました。もちろん、そんなことは人事評価シートなどには書かれていません。

20代の頃は本業以外のことに時間を取られるのは好きではありませんでしたが、「NO」を言わない社員だったのでいろいろな雑事が回ってきました。出身校へ出掛けていき、事務局にお願いして採用案内のポスターを壁に貼る仕事をしているときなどは、「こんなことのためにコンサルになったのではない」と嘆いたものです。

20代の私と同じように、最近の若手社員の間にはこうした雑事を嫌う傾向があります。キャリア志向がますます高まっているため、ちょっとした雑事を頼んでも「それは私の仕事ではありません」「キャリアにつながらないので意味がありません」と拒絶します。とりわけ、いわゆる頭のよい社員は「仕事で評価してくれ」「企画勝負だ」との意識が強く、合理性の見出せない不文律を忌避する「潔癖症社員」になりやすいのです。

しかし会社は仕事だけで社員を評価しません。「NO」を言わなかった私は5つ、6つと担当する案件が増え、それが後につながるキャリアになりましたが、雑事に対してヘリクツを述べて避けていた同期は、頭の回転が速く優秀だったのにもかかわらず、2件しか担当させてもらえませんでした。

雑事もしっかりこなせる人は、ここぞという大きい仕事でも活躍できる。だから上司はそこも評価ポイントにするのです。潔癖症社員にはその点をきちんと説明し、キャリアにつながらないように見えても、先で関係してくるのだと納得させることが大切です。