が、半年後に再発。元気な彼女の姿を見ていて両親は「本当に助からないのですか……」とポツリともらした。
「“一緒に手術を乗り越え頑張ったご褒美で与えられた時間です”と、私は言いました。あのときは心臓の手術経験が100例を超えたくらいでした。今、同じ手術をやれ! と言われてもできないかもしれません。私の体に、何か違う力が乗り移ったようで、今だとあれだけ切り込めないかもしれません」
“天狗になったこともあった”とはいうものの、真摯に歩んできたからこそ、今がある。
「とにかく、今は手術の完璧性を追求しています。若いときは手術の完成度が高くありませんから、患者さんとの距離感を縮めて、まずは患者さんとの相互信頼ありき、でした。今は、相互信頼は手術で勝ち取る! というふうに変わってきました」
手術に自信があり、結果を出せるから言える言葉である。そして、「手術にまだ新しい発見がある」と話した天野教授は若々しさで輝いていた。
1955年生まれ。日本大学医学部卒業。関東逓信病院(現NTT東日本病院)・亀田総合病院・新東京病院心臓血管外科部長・昭和大学横浜市北部病院循環器センター長兼教授。2002年より順天堂大学医学部心臓血管外科教授。映画「チーム・バチスタの栄光」やテレビドラマ「医龍-Team Meaical Dragon」の医療監修も手がけた。著書に『心臓病名医の言葉で病気を治す』など。