健康診断の結果を見るときは、どんな値に注目すべきか。心臓専門医の大島一太さんは「善玉コレステロールの値が高くても安心してはいけない。高すぎる善玉コレステロールは、むしろ動脈硬化を悪化させる恐れがある」という――。

※本稿は、大島一太『100歳まで元気でいたければ心臓力を鍛えなさい』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

健康診断シート
写真=iStock.com/takasuu
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悪玉・善玉コレステロールは「ゴミと掃除機」

悪玉コレステロールや中性脂肪の値が高い場合や、善玉コレステロールの値が低い場合を脂質異常症といいます。これは、最終的に心不全へとつながる最上流にある生活習慣病のひとつです。

コレステロールは体内組織の細胞膜やホルモン、脂肪の消化吸収を助ける大切な役割を担っている脂質のひとつですが、多くの人がご存じのように、血管を詰まらせる悪い働きもします。「悪玉コレステロール」「善玉コレステロール」に分けられ、特に注意が必要なのが「悪玉」です。

悪玉は「LDL」といって、値が上がるとカラダに悪い。対して「HDL」と呼ばれる善玉は、「ゴミ」であるLDLを排除する「掃除機」と考えればわかりやすいでしょう。血中のLDLが血管にベタベタと貼り付いてしまういっぽうで、HDLはそれらを掃除機のように吸い取り、肝臓に戻してくれます。

したがって、ゴミが少なく掃除機が多いほうが、血管にとって好都合。それが逆にゴミが多くて掃除機が少ないと脂質異常症となるのです。また、中性脂肪(トリグリセライド)の値が上がった場合も同様です。

血液中には「LDLとは別の悪玉」が潜んでいる

健康診断で悪玉(LDL)コレステロールの値が140を超えた場合、善玉(HDL)コレステロールが40よりも少ない場合、そして、中性脂肪が150を超えた場合……これらのうち、ひとつでも当てはまれば、脂質異常症と診断します。

最近では、健康診断に「non-HDL」という項目を目にする機会が増えました。これも、けっして見逃してはいけない項目です。じつは、血液中には悪玉(LDL)コレステロールとは別の悪玉がひそんでおり、それらを含めたすべての悪玉の量を表すのがコレだからです。non-HDLの値は総コレステロールよりも正しく、LDLと同じくらい心筋梗塞の発症を予測できることがわかっています。多くの研究で、140mg/dlくらいから狭心症、心筋梗塞の発症や死亡リスクが高まり、170以上になると、かなり高いリスク上昇が示されています。

ほかのサイレントキラー(高血圧や糖尿病など心臓病につながる危険因子)がある人は、150~169くらいから注意してください。

non-HDLは、総コレステロールからHDL(善玉)を引き算して求めます。

non-HDL=総コレステロール-HDL(善玉)
基準値:90~149mg/dl 脂質異常症と診断:170以上

コレステロールやnon-HDLの値が高いと、単なる脂質異常症というだけでなく、甲状腺機能低下症など、他の病気が隠れていることがあります。逆に値が低過ぎるときは、栄養障害や肝硬変などのこともあり、どちらも注意が必要です。

一般に血中脂質の評価は、10時間以上絶食した空腹時の採血で行いますが、non-HDLは食事の影響を受けにくいので、食後でも採血できます。

特に中性脂肪値が高い人は、悪玉(LDL)だけでなく、non-HDLもチェックしてください。悪玉(LDL)とnon-HDLが両方とも目標に達すると、動脈硬化のリスクを大きく抑えることができます。