「コレステロール値を下げるとガンになる」は大ウソ
狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの最上流にあるコレステロールは、サイレントキラーのなかで最も「沈黙」の度合いが高い存在です。その声なき声に注意しながら、値を下げていかなければなりません。
ところが、最近、週刊誌などで「コレステロール値を下げるとガンになる」という記事を見かけることがあります。
実際、ガン細胞はコレステロールをどんどん取り込んで増殖するため、血液検査でコレステロール値が急に下がったときは、ガンが疑われることもあるでしょう。
そのため、コレステロール値が低いとガンになるといわれるのかもしれませんが、これは単なる勘違い。というか、ガンとコレステロールの関係が本末転倒になっており、まったく無根拠な説といえます。コレステロール値が低いのは、ガン細胞にとっても、むしろ不都合なのですから。
同じく「コレステロール値を下げると、アルツハイマー(型認知症)になる」という情報も見受けられます。しかし、これも真実ではありません。
脳の血管には「脳血液関門」という一種のバリアのような機能があって、血液中のコレステロールは通過できない仕組みになっています。
脳のコレステロールは脳内でつくられ、余った分は血液に放出されます。したがって、血液中のコレステロールが脳に影響を与えることはなく、逆に、アルツハイマーの患者さんは脳が萎縮してコレステロールを合成できなくなっています。
45歳未満からコレステロール対策を始めると効果大
コレステロール値が高い人は、若いうちから治療を始めると、高齢になってからの心筋梗塞や脳卒中のリスクが下がるという研究結果が、2019年、世界的に権威ある医学誌『ランセット(THE LANCET)』に掲載されました。
ドイツのハンブルク大学 心臓・血管センターのフェビアン・ブルンネル氏らが1カ国・約40万人の男女を、43年間(1970~2013年)にわたって追跡調査。そのデータを解析すると――。
まず、年齢とともにnon-HDLコレステロール値が上がると心血管病のリスクが上昇し、non-HDLが高い人が治療でその値を半分に下げると、リスクも低下することがわかりました。
さらに45歳未満では、はじめの値が143~186mg/dl(日本の基準値は90~149mg/dl)で心血管病の危険因子がある場合、non-HDLを半分に下げれば、心血管病のリスクが男性で29%から6%、女性では16%から4%に低下するという結果でした。
つまり、コレステロール値が高ければ、将来的に心筋梗塞や脳卒中の発症をより減らすために、45歳未満から治療を始めることが重要との結果が指摘されたのです。
まだ若いからと油断せず、ぜひ早いうちから心臓病のリスクを意識し、改善するよう心がけてください。