危険因子は「掛け算」となって、死亡リスクを高める
悪玉(LDL)コレステロール値は、低ければ低いほど、心血管病の発症や死亡リスクが下がり、逆に高くなるほどリスクも上がることがわかっています(つまり、生きている間にあなたの血管がどれくらいの量のコレステロールに暴露されたかが重要です)。
雪が降る時間が長ければそれだけ積もる量も多くなるように、コレステロールの値が長期にわたって高ければ、血管も詰まりやすくなってしまうのです。
生活習慣病に関するデータを収集し、その結果を医学的に分析して傾向を割り出すには、とても長い時間と労力を要します。特定の人物の健康を長年にわたって追跡・調査しなければならないからです。
ただ、日本にはそのような貴重な成果を生み出している研究がいくつかあります。ひとつは、大阪府吹田市の一般住民を対象にした「吹田研究」です。
この有名な研究では、45歳で悪玉(LDL)が160以上ある人は一生のうちに狭心症や心筋梗塞を発症するリスクが男性47.2%、女性10.2%と割り出しています。
高血圧や糖尿病など、他のサイレントキラーとの重複があれば、心血管病の発症率や死亡率はさらに上昇。たとえば、同じレベルの高血圧でも、そこに高い悪玉(LDL)値が加わると、狭心症や心筋梗塞の発症率ははね上がります。
それらの危険因子は、足し算ではなく掛け算となって、心血管病の発症や死亡リスクを高めるのです。
高すぎる善玉コレステロールにも要注意
ここでひとつ、気をつけていただきたいことがあります。
一般的に、善玉(HDL)コレステロールの数値が高いのはカラダにいいことと思われています。
しかし最近の研究では、過剰な善玉コレステロールは、むしろ狭心症や心筋梗塞といった、冠動脈疾患のリスクが増加する可能性が示されています。
日本の大規模研究では、善玉(HDL)が90mg/dl以上と高い人は、同40~59の人と比べて狭心症や心筋梗塞、脳梗塞の死亡リスクが上昇することが報告されています。
つまり、高過ぎる善玉コレステロールも、動脈硬化を悪化させる可能性があるということです。高血圧、糖尿病、肥満などに合併するときは注意してください。
健診の結果で、「善玉が多いから、悪玉が多くても大丈夫」と思っている人は多いはず。改めてかかりつけ医に相談してみましょう。