健康で長生きするためには、どんなことに気を付ければいいのか。心臓専門医の大島一太さんは「40歳以上の約5割にあたる人に『隠れ心不全』の恐れがある。『何の症状もない段階』からでも心臓力を高める行動をとり、予防を始めてほしい」という――。

※本稿は、大島一太『100歳まで元気でいたければ心臓力を鍛えなさい』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

痛みのために不快感で胸を抱いている男
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高血圧の患者は全国に4300万人

じつは「心不全」とは「心臓に負荷がかかったすべての状態」を総称する病態であり、高血圧や不整脈、貧血、ぜんそく、あるいはタバコの吸い過ぎでCOPD(肺気腫など)になった状態も、広い意味で「心不全」といえます。

医師に「血圧が高めです」と診断された人も、元気にタバコを吸っている人も、「自分は心不全かもしれない」と自覚することからはじめましょう。現在、高血圧の患者さんは全国に4300万人もいます。これは40歳を超えた日本人の約50%にあたり、該当するみなさんには特に「心不全」を意識していただきたいのです。

たとえ健康であっても、心不全は始まっていると心得ておくべきでしょう。

心臓を専門とする私は、50代以上の多くの人に「心不全」が隠れていると考えています。ただし、そのうち、いますぐ治療が必要な人はごく少数。ほとんどの人が「自分の心臓はちゃんと動いている」と感じているはずです。

しかし、じつは、その「無自覚」が心臓にとって最大の敵といえるのです。

自分の心臓がいま「どの段階か」把握する

心不全は時間をかけて徐々に進行していく病態です。これを最近ではガンと同じようにステージで分類するようになりました。

ABCDと4つのステップがあります。

ステージAは「心不全の発症リスクはあるものの、心臓に器質的な障害を認めない」という状態です。いわゆる「高血圧」がここに当てはまります。

これをそのまま放置すると、ゆっくり心臓の形が変化していきます(器質的障害)。しかし症状はないので本人は気づきません。この状態がステージBです。

高血圧がカラダに悪いということは、多くの人が認識していると思います。ですが、実際、放っておくと具体的に心臓はどうなるのか、ご存じでしょうか。

心臓は筋肉でできた袋のような臓器であり、高血圧を放置するとその筋肉(心筋)がだんだん分厚く変化します。これを「心臓肥大」といいます。まったく症状がなくても、ステージAの人より著しく死亡率が上がることがわかっています。

次に、「器質的心疾患に関連した症状を認めたことがある人」がステージCに入ってきます。そして、ここからみなさんがイメージするような重症心不全となり、最期を迎えるステージDとなるのです。