「想いを伝播」させるメディア


WOWOW・米田匡男氏

実際にTwitterをマーケティングに利用しているユーザ企業の事例を紹介したい。年間約800本の映画を24時間365日放送するWOWOWだ。同社のデジタルコンテンツ室次長兼デジタルリレーション部長の米田匡男氏が登壇し、現在までの取り組みについて語った。

WOWOWは早くからSNSへの取り組みを開始しており、Twitterのアカウント開設は2010年から。既に15万フォロワーを獲得しており、8月の月間グロスリーチ(重なりを考慮しないリーチ数の単純合計)は1949万インプレッションに到達したと説明した。米田氏は、Twitterをこれら15万人のフォロワーに対して単純にメッセージを発するだけのメディアと捉えておらず、「想いを伝搬」させるメディアであると、熱く拳を握りしめながら語った。

その背景にはWOWOWの存続を賭けた危機感があった。WOWOWにとって最大のキラーコンテンツは膨大な数の映画である。だが10年前と異なり、映画配信ビジネスを手掛けるのはWOWOWとスカパーの2社だけという状況ではない。今や通信事業者でさえタブレット時代の収益向上を狙って映画配信サービスを開始しているし、Hulu等の外資系映画配信サービスも進出してきている。映画配信ビジネスが大きく変化する状況で、WOWOWを選んでもらう理由をつくり出さなければならない。

WOWOWの強みは「エンターティメントを心底好きな人間たちが集まって、本当に楽しんでもらえるエンターテインメントを提供している」であると考え、そういった想いに共感してくれる人たちとしっかりエンゲージするためにSNSを活用していると語る。

同社が出資する「桐島、部活やめるってよ」という映画がある。この映画を「好きだ」と言ってくる人たちを集めて、ニコニコ生放送やUstreamで「朝まで桐島を語る会」といった中継イベントを開催した。このイベントを見たユーザが映画を熱く語る識者たちに感化され、想いがTwitterで拡散し、徐々に「共感の醸成」が始まり、初めは閑散としていた映画館もTwitter等のSNSから生じた「共感の醸成」によって劇場が埋まりだす効果が確認できているという。単館系のようなコアなファンに支えられている映画では、こういったプロモーションは効果的だと説明した。