「CEOヘッドライン」でメッセージを発信

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伊藤社長のある1日

最近はグローバルに業務を展開する中で、会社の考えをできるだけ時間差を小さく、いかにクイックシェアリングするかが大きなテーマになってきました。

そこで社長に就任してからはじめた取り組みの1つに「CEOヘッドライン」があります。これは週に1回、当社のタイムリーなニュースを国内外の味の素社員へウェブを通じ発信するものです。

作成のために専任担当者を置き、発信はニュースのあった日からなるべく3日以内。あまり読むほうの負担にならないよう写真を大きく使い、それに解説をそえるような形式になっています。言語は日本語版と英語版があり、さらに各国で現地語への翻訳を行っています。

だいたい社長というと会社の奥座敷に座り、ずっとパソコン画面をチェックしているようなイメージがありますよね。つまり、何をしているのかよくわからない人。しかしそれでは会社の考えを共有することなどできません。

CEOヘッドラインは読者である社員から内容に関するアンケートを行っており、それによると大変好評を得ています。

もう1つ社長になってから変えたのが経営会議の情報伝達です。当社では毎週金曜日に経営会議を実施し、すべての重要な議論や決定を行っていますが、従来は情報セキュリティの問題から経営会議から出た書類はコピー禁止で、内容の伝達は口頭で行うようになっていました。

しかしこのやり方では、説明者がよく理解していないことは、部下に伝わるにつれてどんどん内容が薄くなる弊害がありました。そこでこれを改め、社内に伝えるべき内容で、かつ外部に出ても問題ない範囲でまとめた文書を経営会議が終わった時点ですぐ配布し、役員から部長へ、部長から部下へとその日のうちに伝達するようにしました。

ほかには四半期業績を私が役員と部長職に報告する会議でも同様の取り組みを行ったり、日本の新聞や雑誌で当社が取り上げられた内容について、その概略を英語に翻訳し、海外拠点に配信したりもしています。

このような施策を行うのは経営と現場との距離を縮めるためです。もちろん直接現場に行って社員やお客様と会い、市場に行って現状を見ることも大切なのですが、CEOヘッドラインなどを通じて私の顔や動向が伝わっていると海外に行って社員に会ったとき、あいさつが「はじめまして」ではなくなります。ときには「あちこち行って大変ですね」と、本社ではなかなか言ってくれないような嬉しいことまで言ってもらえます(笑)。

味の素社長 伊藤雅俊
1947年、東京都生まれ。慶應義塾志木高校卒。71年慶應義塾大学経済学部卒業後、味の素入社。食品部長などを経て、99年取締役、2006年食品カンパニープレジデント。海外企業との提携やM&Aを数多く手がけた。09年より現職。
(宮内 健=構成 芳地博之=撮影)
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