大学入試において、一発勝負の学力試験だけでは測れない能力や意欲を評価する「総合型選抜(旧AO入試)」や「学校推薦型選抜」の募集人員の枠が広がっている。
総合型選抜などで、出願資格や評価の対象として注目されているのが、生徒が高校在学中に取り組んだ「各種コンテスト&検定」での実績と中身だ。これまでのペーパーテストとは何が違うのか。どんな準備が必要なのか。総合型選抜の対策を指導している早稲田塾執行役員の中川敏和さんに聞いた。
なぜコンテストや検定の活用が増えているのでしょうか?
背景には、新学習指導要領で重視されるようになった「探究学習」があります。インターネットや書籍などで調べることで完了する「調べ学習」とは異なり、問いを立て、現場にでかけて聞き取り調査したり、アンケートをとったり、世に出ている論文(日本語以外も含む)を読んだりして分析・考察し、解決策を探ります。このプロセスは各大学が総合型選抜などで生徒に求める能力と親和性がとても高いのです。
コンテストへの挑戦は、探究学習のアウトプットの場であり、学びを深める絶好の機会となります。異なる地域から、「我こそは」と挑む人が多い“他流試合”にエントリーすることで、結果はどうあれ、たくさんのフィードバックと刺激が得られ、さらに成長するきっかけになります。
かつて、コンテストを利用したAO入試は、全国大会レベルのずば抜けた実績を持つ生徒しか合格できないと捉えられがちでした。しかし、探究学習が広がり、多様なコンテストが開催され、その存在が紹介されるようになったことで、「自分も挑戦できるかもしれない」と考える生徒が増加。同時に、受験生を集めたい大学がコンテストを入試に採用し始め、そうした入試を利用して進学する生徒が多くなることで、大学進学の有力な選択肢になりつつあります。
どんなコンテストや検定が有利なのでしょうか?
上と次ページの表は、現在、大学が入試に採用している主なコンテストや検定です。ジャンルは幅広く、理数系、ビジネス、語学検定、IT系、ロボット製作、スピーチなど多岐にわたります。
大学側はコンテストの実績を、生徒の活動実績やポートフォリオ(活動報告書)の一部として、志望理由書との関連性を見ながら評価します。
ここで重要なのは「どのコンテストで賞を取ったか」という結果だけではありません。大学側が知りたいのは、「コンテストを通じて何を学び、どう成長したのか」「その経験を大学での学びにどうつなげたいのか」といったプロセスと展望です。
学部によっては、コンテストや検定を指定していますが、一見、志望学部と関係ない分野のコンテスト実績でも、そこで培われた探究心や粘り強さ、独創性などを、自身の言葉で、大学での学びと結びつけて説明できれば、評価してくれる大学もあります。
例えば、科学系コンテストで賞を取った生徒が、法学部を志望したとします。ふつうに考えれば理系学部を志望するのでしょうが、「コンテストを通じて法律に関する強い興味を覚えた」、そんな志望転換の理由が具体的に述べられれば、大きな説得力を与えることができます。
大切なのは、コンテストへの挑戦を通じて得た学びを「マイストーリー」として語れること。単なる「資格」ではなく、自身の興味・関心を深掘りし、実践力を示す経験としてコンテストを捉えることが重要です。





