1945年2月19日、硫黄島で「地獄」が始まった。兵力に劣り、孤立無援の日本軍が1カ月以上もアメリカ軍相手に抗戦できたのはなぜか。『弱肉強食の現代史18バトル』(KADOKAWA)より紹介する――。(第2回)

日本から2400キロ離れた「何もない島」での戦い

登場人物紹介
小太郎:ごくフツーの中学生
つきじい:偉大な歴史家トゥキディデスの生まれ変わり
硫黄島の空撮写真
硫黄島の空撮写真(画像=Trevor Welsh/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

【つきじい】この島を見てごらん。

【小太郎】えっ、何にもなくて平らですね。だけど、手前にポコッと山があります。

【つきじい】これが硫黄島。東西8kmの小島じゃが、ここが日米両軍の戦いで、最大の激戦地となったのじゃ。

【小太郎】こんな何にもない島が、どうして激戦地になったんですか?

【つきじい】地図を見ればよくわかる。硫黄島はどこかな?

【小太郎】えーっと……。あった、日本のずっと南だ!

【つきじい】ミッドウェー海戦のあと、日本軍の敗北が続いた。米軍は太平洋の島づたいに日本軍を追い込み、1944年の夏にはマリアナ諸島のサイパン島、テニアン島を占領した。

【小太郎】硫黄島の、さらに南ですね。

【つきじい】このマリアナ諸島から日本列島までの距離が2400km。アメリカ軍の最新の爆撃機B-29が往復できる距離じゃった。

【小太郎】……ってことは、マリアナ諸島が手に入れば日本本土をいつでも爆撃できる!?

【つきじい】そういうことじゃ。日本軍はここ硫黄島の基地を増強し、日本列島に向かってくる米軍爆撃機の情報を収集し、迎え撃った。

【小太郎】なるほど!