朝6時に起きて、漢字・計算プリントを1枚ずつやる。なぜなら、それが合格への一歩となるから。そんな確固たる価値観で、とにかく黙って3週間チャレンジするのだ。三日坊主になる危険性もあるので、軌道に乗るまでは親もサポートするといいそうだ。

勉強に限らず、「毎朝起きたら、好みの音楽をかけて、体を動かす」「寝る前に、一人の静かな時間を過ごす」「買い物をしたときに、お店の人に『ありがとう』を言う」など、子供にできそうな新たな習慣から、親子で取り入れてもいいかもしれない。

METHOD 10 レーズンを食べて心を静める

最後に、成瀬氏に、イライラした状態の子供を平常心に戻したいときや、子供との絆をより強いものにするためのワークを教えてもらおう。それは「レーズンワーク」と呼ばれるものだ。

干しぶどう1粒を、「これが最後の晩餐(ばんさん)だと思って」よく見て、触って、口に入れる。ゆっくり噛んで、じっくり味わう。ただそれだけのワークだ。簡単なことだが、小さなレーズンのどこにそんなうま味が隠れていたのかと驚くほど、甘くて少し酸っぱい味が口いっぱいに広がる体験は実に新鮮だという。何の変哲もないレーズンだが、五感を使い意識を集中して観察・賞味するだけで、「1粒のレーズンを食べる」というシンプルな行為が、不思議な充足感をもたらしてくれる。

「これはマインドフルネスというワークのひとつです。このマインドフルネスとは、自分がしていることを十分に理解し、判断や評価なしにいまの瞬間を受け入れる、という状態。『いま、ここ』に焦点を当て、やっていることを体感し、好き嫌いにかかわらず湧き上がる感情を味わうことがマインドフルといえます。シャハーはハーバードの講義で、心と体に健康をもたらすとして、このレーズンワークを学生に紹介しています。親子で実践すると、とてもいい経験になり、さらに強固な親子のパートナーシップを築くことができるようになると思います。イライラしていた子供も、現状を受け入れるということの大切さを学び、心が次第に平静になるのではないでしょうか」

以上のようなハーバード流ワークを使えば、子育てはもっとシンプルになるのかもしれない。

成瀬まゆみ
同志社大学英文学科卒。オーストラリア国立モナッシュ大学院修了。外資系企業、大学講師などを経て独立。ポジティブ心理学を学び、翻訳や、セミナー、個人セッションなどを中心に活躍。社団法人ポジティブイノベーションセンター講師。
(大和書房=写真提供)
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