企業がファンを獲得するために、重要なこととは何か。2024年に新日本プロレス社長に就任したプロレスラーの棚橋弘至さんは「プロレス人気が低迷していた時期にも、地方での宣伝活動に積極的に参加し続けた。そうした場で直接会った人は、その後も試合を観に来るファンになってくれる」という――。

※本稿は、棚橋弘至『棚橋弘至、社長になる プレジデントエースが描く新日本プロレスの未来』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

ファンの声援に応える棚橋弘至
写真=共同通信イメージズ/山内猛
横浜アリーナでファンの声援に応える棚橋弘至=2022年1月8日、横浜アリーナ

プロレスファンはなぜ社長人事にまで注目するのか

プロレス会社にとって、社長人事は通常の会社とはやや異なる意味合いを持つ。

ゲームやアニメなどのファンを持つエンターテインメント会社において、社長人事をファンの方々が気にする機会はそれほど多くないだろう。だが少なくないプロレスファンはレスラー社長であろうとも、そして背広組の社長であろうとも、その経歴や人柄なども含めて興味を持ってくれる。

これは新日本プロレスがこれまで何度も経営危機に陥ったことが一つの原因かもしれない。つまりファンの方も経営者目線を自然と持ってくださっていて、自分だったらこう経営すると考えたり、レスラーへのアプローチなどもそれぞれの理想とするものを考えてくださったりしていると思う。

これはなぜか。リング上の対立構造などに会社というものが関わり、時として反体制派のチームからは耳が痛い会社批判が発せられる、プロレス独自の文化構造と切り離せない。つまり経営と現場のレスラーがある意味地続きとなっていて、ファンの方はそこを切り離しておらず、どこか株主のような視点で見ておられる特殊構造の世界なのかもしれない。