都合よく使われている「税収の上振れ分」
来月行われる参議院選挙に向けて与党第一党である自民党が掲げる選挙公約が、ここに来て徐々に明らかになってきた。
その内容とは、「賃上げ」を中心に据えた成長戦略と言っていいだろう。具体的には2040年までに国内総生産(GDP)を1000兆円にまで引き上げることで、国民所得を1.5倍に増やすというものだ。この施策は、経済産業省が5月に作成したが公表されなかったレポートを基にしている。
この政策は確かに目玉の一つであるが、すべての野党が消費税減税を掲げて選挙戦に臨もうとしているいま、有権者に対して「15年後に給与が1.5倍になる」と訴えても、共感を得るのは難しいであろう。有権者がそれだけで自民党に票を投じようと思わないことは誰の目にも明らかだ。
そうした状況の中で、あまりの不評ぶりに今春スクラップされた過去の政策を蒸し返して再導入が検討されているのが「1人2万円の給付金」だ。そもそも連立政権の一角を占める公明党は、消費税減税を選挙公約に盛り込むべく、自民党と交渉を重ねてきた。しかし、自民党の森山裕幹事長以下自民党執行部が頑としてこれに応じなかったため、最終的に公明党が折れることで事態の収束が図られることになった。
しかし、完全なゼロ回答では、公明党としても支持母体である創価学会に対して説明がつかない。その結果として、再び「給付金」の導入が俎上に載せられたのである。
とはいえこれは、4月上旬に自民党が選挙対策として打ち出した、「国民一人当たり3万~5万円の給付金」構想と同様のものである。当時、この案は世論から激しい反発を受けて撤回された。それにもかかわらず、再びこの政策を前面に出すというのは、いったいどのような神経なのか驚かされる。あくまで公明党の顔を立てる形で、給付金という案が再び表舞台に登場したのだろう。
問題はその財源である。
今回の給付金は、当初予想した税収よりも増加した分の税収、いわゆる「税収の上振れ」を財源とし、新たな国際発行は行わない方針だ。つまり、実際の税収が当初の見積もりよりも多かったことを受けて、それを国民に還元するというスタイルだ。この上振れ分を活用し、物価高対策の一環として給付金の支給を行うという説明である。
ここで筆者が感じるのは、「税収の上振れ」が極めて都合よく使われているという事実である。今回はこのことについて解説したい。

