マツダが4月22日に発表した500人の希望退職者の募集で中高年ビジネスパーソンの中に大きな動揺が走っている。ジャーナリストの溝上憲文さんは「マツダはトランプ関税とは関係ない措置としているが、米国市場を主戦場とする輸出企業にとって関税の影響が無縁なはずがない。今後、自動車産業だけでなく中小企業にもリストラの嵐が吹き荒れる恐れがある」という――。
ずらりと並ぶマツダの車
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マツダの500人希望退職者の募集でリストラが雪崩を打つのか

トランプ政権の自動車産業への関税引き上げが、国内企業のリストラ加速の引き金となる可能性が出てきた。そのひとつが4月22日に発表したマツダの500人の希望退職者の募集だ。

対象者は工場の技能職を除く勤続5年以上かつ50~61歳の正社員。マツダは「セカンドキャリア支援制度」と名付け、「従業員の自律的なキャリア形成を支援する新たな人事制度の一つ」と位置づけ、「マツダで積み重ねたスキルや経験を活かし、社外や地域社会での活躍・貢献を目指す従業員の前向きな選択を支援」するものと述べている」(同社リリース)。

また同社の執行役員は「関税を踏まえて導入した制度ではない」と発言し、トランプ関税とは関係ないとしているが、米国市場を販売の主戦場とし、日本からの輸出も多い同社にとって関税の影響が無縁なわけではない。

自動車関連では東証スタンダード・名証プレミアに上場する自動車部品製造業の今仙電機製作所が4月25日、岐阜県にある国内2工場の閉鎖を発表している。

3月25日には北米向け自動車電機部品メーカーのSMK(東証プライム)が国内100人規模の希望退職者募集を発表している。対象者は40歳以上64歳3カ月以下、かつ勤続5年以上の正社員だ。

自動車大手のリストラで注目されるのが今年1月に日産自動車が公表した、グローバル規模での9000人の人員削減だ。ホンダとの合併が破談になったが、4月24日には2025年3月期の連結最終損益が最大7500億円の赤字になったと発表した。リストラは世界の管理部門で2500人、工場で6500人、世界3工場を閉鎖するとしていたが、リストラの人員がさらに拡大する可能性がある。

今後、大規模リストラが始まる可能性について、中堅機械メーカーの人事担当者はこう指摘する。

「業界トップクラスがリストラに踏み切るかどうかを業界の中堅企業は注目している。トップクラスがリストラを実施すると、雪崩を打って中堅企業もリストラに踏み切るのが今までのパターンだ」

自動車産業は裾野が広い。自動車メーカーが実施すれば自動車部品大手や自動車関連産業、そして中小企業にも拡大するかもしれない。

そうでなくても国内では関税強化による輸出産業低迷への懸念のほか、日銀の利上げによる金融引き締めや物価高による消費の抑制など日本経済の不透明さが増している。