ひとつのテーマは貫きつつ、気分転換を図る
話の流れの中で、聞き手を飽きさせない役割を果たしたのがちょっとしたエピソードの“小話”である。彼女は、いかにしてクリエイターが作品を生み出すかに焦点をあて、「実は誰もが天才になりうる」との主張で話の筋を通しながら、天才と言われる人たちの創作活動にまつわる小話で、気分転換かつ主張のサポートとなる事例を盛り込んでいった。
まずは、詩人ルース・ストーンは、詩が“到来する”ときには地響きすら感じ、急いで紙とペンを探して書きとめる。ときには間に合わずにアイデアが別の作家の元へ飛んで行ってしまったこともあり、あるときは詩が自分の体をすり抜けるところを、しっぽをつかんで引きずり戻して書きとめると……内容は尻尾から頭へと逆になっていたそうだ。
ミュージシャンのトム・ウェイツは、高速道路を運転中に曲の断片が聞こえきた。すぐにもメモを取りたいが自分は高速道路を運転中だ。そこで彼は天に向かって「今は運転中だ! 俺に曲を書いてもらいたきゃ、出直してこい」と叫んだという。
天才とは、こんなにすごい形で作品を生みだすものかと唖然とさせられるが、実名を交えた嘘のような本当の話らしい。エリザベスはこうした小話を使って「自分は非凡なのではない。才能とは、彼ら同様に誰かが手助けしてくれるものだ」といい、そのため「誰でも天才たりうる」というテーマを貫いていった。
彼女にならって伝えたいテーマを串として、いろんな小話の団子を串にさす風をイメージしてみよう。一本の串に、まずは桜味、次にヨモギで味を変えたとしても、テーマにちゃんと刺さりさえすれば、立派に筋の通った話になる。これで小刻みに刺激が変わって気分転換にもなるし、なによりも自分の話だけでは足りない情報の補足ともなる。では、これで応用を試みよう。