追加放出はJA農協の在庫積み増しが目的

7月まで10万トンずつ放出すると、農水省は合計して61万トンの備蓄米を放出することになる。

今回JA農協の集荷量が減少したことを、農水省は意図的に問題とした。農水省自身の調査で否定されたが、様々な業者が集荷に参入したので、米価がつり上がったという虚偽の主張を展開した。

既に放出した21万トンの根拠は、JA農協と卸売業者を合わせた民間在庫量が減った40万トンを補填ほてんすると言うのではなく、JA農協の集荷量が21万トン減ったからだというものだった。この時点で、JA農協救済という疑いが持たれるものだった。米価維持のためJA農協が在庫調整すれば、61万トンのかなりの部分は市場への供給量の増加ではなく、JA農協の在庫積み増しとなる。JA農協の独占力が向上し、卸売業者との相対価格交渉に有利に働く。

さらに、農水省は1年後に61万トンを買い戻す。

これだけの量を市場から買い上げ隔離すれば、農家が25年産の生産を相当増やしたとしても米価は下がらない。JA農協は米価操作をやりやすくなる。

追加放出されるのは「古古米」

最後に、農水省は毎年20万トンを備蓄米として玄米で積み増ししている。

備蓄米として放出した21万トンは、24年産米が中心である。4・5月に放出されるのは、23年産米の古米が中心となる。さらに、6・7月に放出されるのは、22年産米の古古米となる。もみ貯蔵なら食味は維持されるが、技術が進歩しているとしても、玄米の保管で品質や食味はどうなのだろうか?

70年代から80年代初めに、政府が過剰米在庫を抱えていたころ、古米は食べられても古古米はかなり食味が落ちた。古古米を放出しても消費者が食べなければ、流通量を増やして米価を下げることにはつながらない。タイ等から大量のインディカ種のコメを輸入して消費者に嫌われて廃棄処分した平成のコメ騒動の二の舞になる。

玄米
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