価格を操作しているのはJA農協

卸売業者は相対価格をベースに自らのマージンを加えてスーパーや小売店に販売する。

相対価格が下がらなければ、小売価格も下がらない。相対価格を操作できるのはJA農協である。その市場シェアは減少したとはいえ5割を占める。この独占事業体は、在庫量を調整(増や)して市場への流通量をコントロールする(減少させる)ことで、相対価格を高く維持できる。

農水省は、JA農協以外の流通ルートが増えたから米価が上昇していると説明しているが、これは全くの虚偽である。米価を高く操作してきたのは、JA農協そのものである。

その手段として利用してきたのが在庫調整だった。

JA農協は米価を操作したいために、2005年には全国米穀取引・価格形成センターを利用して架空取引によって米価を高く設定する「全農あきた事件(※編集部注)を起こしたし、2011年には価格を操作しやすい相対取引に移行するために同センターへの上場を減少し廃止に追い込んでいる。また、農家にとってはリスクヘッジの機能を持つ先物取引に反対してきた。公正な価格が形成されると価格操作ができにくくなるからである。

農水省の主張は経済学的にもナンセンスである。JA農協という独占事業体の市場占有度(独占度)を高めれば、価格は下がると言っているのである。他の事業者の市場参入を増やさなければ、米価は下がらない。さまざまな事業者がコメの集荷に参入することは、コメ市場をより競争的なものとし、JA農協の独占的な価格形成を防止する効果を持つ。

※2005年1月に発覚した全国農業協同組合連合会秋田県本部(全農あきた)の「米横流し事件」と「米架空取引事件」。全農あきたの子会社のパール秋田が、取引先の経営不振により2億5100万円が不良債権化した。パール秋田は赤字に陥ることを防ぐため、農家から販売目的で預かっていたコメを横流しして簿外販売し、取引先から債務弁済があったように装い利益を計上した。また、全国米穀取引・価格形成センターにおいて、全農あきたはパール秋田等との間で架空取引を行い、パール秋田等に高値で落札させ、米価を高く操作した。

追加放出でやむなく20%は下げる

ただし、JA農協もある程度相対価格を下げなければ、政府から何のために備蓄米を放出したのかという批判を受ける。しかし、備蓄米を2万1000円で買っているので、それ以下に下げると損をする。

つまり、現在の相対価格2万6000円を2万1000円に20%減少させることが限度となる。同じ割合で小売価格が低下すると仮定すると、それは3400円となる。

今回の備蓄米放出には、JA農協救済というもう一つのカラクリがある。