「正解にはたどり着かない問題」の解き方
このように「もっとよく考える」のは、創造性やひらめきに近づくどころか、逆効果であり、脳にリミッターをかけてしまう行為です。
では私たちはどのような頭の使い方をすれば良いのでしょうか。
AIを含むコンピュータシステムは、「よく考えれば正解にたどり着く問題」を解くのが得意です。アルゴリズム問題とか論理的思考問題という言い方もしますが、系統立てて考えることで、正解や最適解を導くことができます。
最近「AIが人間を超えた(る)」とか「AIが人間の仕事を奪う」というニュースや記事をよく目にします。これはアルゴリズム問題を解くスピードが、AIは人間よりも遥かに速いということです。しかしこういう問題は、私たちを取り巻く問題のごく一部に過ぎません。
もう一方の「いくら考えても正解にはたどり着かない問題」ですが、このような問題はヒューリスティックな問題、あるいは創造的問題といいます。アルゴリズム(論理的思考)問題では、AIも人間も同じ解き方をしますが、ヒューリスティックな問題では、そのやり方が異なります。
そして大事な点は、この「正解にはたどり着かない問題」を解いても、求められるのはあくまで「うまくいく確率」であるということです。したがってデートの服装問題では、絶対(100%)正しい答えは得られません。
プロ棋士の脳内で起きていること
その代わり、ヒューリスティック(創造的)な問題では、失敗(デートの相手との相性が合わなかったなど)もあり得る代わりに、待ち合わせに現れたあなたを見て、思わず惚れてしまうというような予想以上の「成果」を挙げることもあり得ます。
こういったヒューリスティックな問題の解き方の違いがわかりやすいのは、前述した囲碁や将棋などでのAIと人間(プロ棋士)の対戦です。
将棋や囲碁のプロの対戦を見ていると、一手にかける時間が長いことに気づきますよね。
素人同士の対決だと数秒から数十秒で指し(打ち)合うことが多いのに対し、プロ棋士は数十分、時には1時間以上かけて一手を指し(打ち)ます。囲碁の例ですが、一手を打つのに16時間という記録もあるそうです。
この「長考」と呼ばれる深い思索中のAIとトップ棋士の脳の中を覗いてみましょう。
ディープ・ブルー(チェス)やアルファ碁といったAIは、一手を指す(打つ)ごとに繰り返しシミュレーションを行って、最も勝つ確率が高い手を選びます。一手だけでも何十通りの手がありますから、数手先を読むだけでも何千何万通り、すぐに何億通りやそれ以上の桁になります。
この読みを、AIは膨大なデータとそれを処理する計算力を駆使して行っています。