考えて出る答えには限界がある
ここでもまずは「やってはいけないこと」からお話ししましょう。
それはAIに負けまいと、一生懸命考えてしまうこと。AIに対抗するかのように、とにかくたくさんの知識をインプットしようと「努力」してしまうことです。
学校の試験で間違った解答をしたり、日常生活でミスをしてしまったとき、先生や親から「もっとよく考えなさい!」と怒られた経験がありますよね?
先生や親がそう言うのは、「どんな問題であっても、たくさん考えれば考えるほど、より正しい解答を導くことができる」という前提があります。確かに学校の勉強や、与えられた仕事をきちんとこなすためには、「もっとよく考える」のは大事なことです。
私たちはこのように教えられているので、どんな問題であっても「もっとよく考える」ことで正解が導かれると思いがちです。
しかし残念ながら、それが通用するのは、予あらかじめ正解が決まっているもの、問題ページの次をめくれば「解答」が書いてあるものに限られます。
学生時代は、机に向かって問題と答案用紙を配られたら、「解答と同じ答え」をたくさん書ける人が優秀とされましたが、一歩社会に出ればそういう問題は、ルーティンワークやマニュアル仕事など、ごく一部に過ぎません。
脳の貴重なエネルギーの無駄遣い
来週の天気や、投資したい株の将来の価値、営業会議のプレゼン、明日のデートに着ていくべき服装など、ある程度のレベルまで達したら、あとはいくら考えたところで正解の確率が上がるわけではないことでも、「もっとよく考えよう」という教えの呪縛からなかなか抜けられないことが多いですよね。
はっきり言えば、これは脳の貴重なエネルギーの、無駄遣い以外の何ものでもありません。
デートの服に悩むくらいなら、まだ微笑ましいですが、答えの出ない問題を無限ループのように考え続ければ、当然脳は疲弊します。そうなっても、まだ考え続けて脳が壊れてしまう(=精神を病む)人も少なくありません。
こういうのを「ぐるぐる思考(反芻思考)」と呼びますが、うつ病や不安障害などでよく見られる症状です。「ネガティブ思考」(悪い方向に考えること)が良くない、などと書かれている記事も見られますが、ポジティブ、ネガティブの問題よりも「答えが出ない問題について、無限ループで考え続ける」のが脳に悪影響を及ぼしていると考えるべきでしょう。
そして、創造性やひらめきが必要な問題というのは、100%「よく考えても答えが出ない問題」です。こういう問題は今まで親や教師に教わったように「もっとよく考える」で対処しようとしても、うまくいかない。うまくいかないどころか、創造性やひらめきに蓋をして、一生懸命リミッターをかけている行為にほかならないことを、私たちは自覚する必要があります。