長考とは「直感→それを検討している」時間

一方で人間の棋士の場合、「直感」が先に来ます。特にプロ棋士は、数秒足らずで「ここだ」という手を直感的に見つけ出します。その後の持ち時間を使って、直感で見つけた手をシミュレーションして、うまくいくか検証していきます。

島青志『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)
島青志『いつもひらめいている人の頭の中』(幻冬舎新書)

このプロセスを、羽生善治さんは著書『直感力』(PHP新書)の中で「ひらめき」「読み」「大局観」と表現しています。また、羽生さんはインタビューで、一瞬の直感が後の論理的な検証を導くと語っており、そのひらめきの精度が勝負を左右すると述べています。

私も友人のアマチュア棋士に話を聞いてみましたが、プロと同じような流れで思考を進めるそうです。直感で「ここに指したい」と思った手を、その後の検討で裏付けていくというわけですね。

これが「ヒューリスティックな思考法」です。もちろんトップ棋士だけができる思考法というわけではなく、私たち誰もが普通に行っていることです。

ただもしかすると、今まで機械的(アルゴリズム)に思考しすぎて、いわゆる「勘が鈍っている」人がいるかもしれませんし、あるいは、そもそもそういうやり方(があること)を知らないで、ヒューリスティックな問題に対しても、アルゴリズム問題を解くようなやり方で臨む人もいるかもしれません。

この状態が、先ほど述べた「答えの出ない問題を無限ループのように考える」状態なのです。

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