中国共産党はエンタメ作品に対して厳しい統制を行っている。日本のマンガ・アニメは人気だが、中には輸入が許されない作品もある。フリージャーナリストの武田一顕氏は「『進撃の巨人』は、中国共産党にとって都合の悪い世界観を描いている。映画はもちろん、原作コミックも禁書扱いだ」という――。

※本稿は、武田一顕『日本人が知っておくべき中国のこと』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。

中国の国旗
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中国人は千昌夫の『北国の春』が好き

中国の歌手は、ほとんどがきちんとした音楽教育を受けています。言い方は悪いですが、歌はうまくないけれどかわいい女性アイドルやかっこいい男性アイドルは、中国にはまずいません。上の世代のレジェンドの弟子になって、下積みを重ねてデビューするというケースもありません。

多くの歌手や演奏家は、北京にある中央音楽学院という名門音楽学校を卒業しています。この学校には、曲、音楽学、指揮、ピアノ、オーケストラ、民族音楽、声楽オペラなどの学科があり、専門的な音楽教育が施されます。

また、中国では共産党公認の歌手や演奏家でないと、コンサート活動が難しいので、音楽家人口がなかなか増えません。

そういう環境だからでしょうか、中国人は自分たちの国にいないタイプの日本人歌手が好きです。私が北京にいた90年代には、日本で1977年にリリースされた、千昌夫の『北国の春』が人気でした。

雪どけ、朝霧、水車小屋……、そして、おふくろ。『北国の春』は故郷を思い、帰りたくなる歌です。