本稿は、和田秀樹『死ぬのはこわくない』(興陽館)の一部を再編集したものです。
高齢者の肉体的機能はそれほど衰えていない
老化と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは足腰の衰えでしょう。しかし、意外なことに、現代の高齢者の肉体的機能は、若い頃と比べてほとんど遜色はありません。通常の速度で歩いたり、最大酸素摂取量を維持したりという基本的な力に関しては、若い頃とほとんど変わらないことが分かっています。
東京都が発表した「高齢者の生活実態」(令和2年度)では、歩行について「ひとりで全部できる」と回答した人は65~69歳で男女ともに96.5%。75~79歳と年齢が上がっても、男性では91.7%と非常に高い数値となっています。
自転車に乗って坂道をこぐと、次第に息が上がって苦しくなってきます。そして、最後には「もうこれ以上は無理!」という限界に達するのですが、このときに1分間にどれくらいの酸素を取り込むことができるか、という数値を最大酸素摂取量といいます。この数値も、若い頃とそれほど変わりません。
これらのことから、普通に歩いたり、階段を上ったり、自転車をこいだりといった基本的な体力に関しては、高齢になってもそれほど落ちないということが分かってきます。
人の老化は感情から始まる
反して、前頭葉の萎縮は40~50代から目に見えるように始まるので、「感情」は若いうちから目に見えないところで老い始めていることが分かります。これが意味することは、人の老化は感情から始まるということです。つまり、感情が老化するから老け込んでいくのです。ということは、感情の老化を防げば、かなり長い間若々しさを維持できるということになります。
せっかく、自由になれたのです。これからは、何でもあなたの思い通りにできます。ヨボヨボして暮らすなんてバカなことはありません。あなたの人生を楽しむためには、若返らなくてはならないのです。そのために何が必要かをお教えしましょう。
若返りの鍵を握るのは性ホルモンです。大切な人を亡くしたということは、おそらくある程度高齢の方だと仮定して説明します。
60歳より少し前から、私たちのホルモンバランスは変わってきます。男性は男性ホルモンが徐々に減り、女性は女性ホルモンが劇的に減ってきます。それによって、人間は、中性化し始め、生殖期から老年期に入るのです。
この時期から同時に、脳の前頭葉という部分の老化が始まり、セロトニンという伝達物質も減ってきます。つまり、体も脳も大変換期を迎えるというわけです。
この時期に何も「思う」ことがないと、老いは容赦なく訪れてきます。放っておいては、性ホルモンの低下が進み、生活の質は下がる一方です。

