※本稿は、松本哲(著)、本間龍介(監修)『楽しく遊びながら子どもの「発達」を引き出す本』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
「原始反射」が残存する子供が増えている
「じっとしていることができない」「話を聞けない」「集中力が続かない」「姿勢が悪い」……いま悩んでいるお子さんの困りごと、それは子どもの性格のせいではなく、ましてや親のしつけや育て方のせいでもない可能性があります。そこには、「原始反射」がかかわっているかもしれないのです。
そもそも、原始反射とはどのようなものなのでしょうか。
人間の脳は、大脳、小脳、脳幹から成っています。原始反射は、大脳をささえる幹のような形をしている部分=「脳幹」による反応だといわれています。いわゆる反射とは、熱いものに触れたときに、無意識にパッと手を引っ込めるような反応のこと。反射は、身の危険をすばやく避けるための反応といえます。
その中でも原始反射は乳児期早期に見られる反射で、生まれたばかりの赤ちゃんが生き延びるためのもの。原始反射にはいくつか種類があり、個人差はあるものの、成長とともに運動機能が発達していくにつれて自然に消えていくものです。多くは生後数カ月から、遅くとも3歳頃までには消失するといわれています。
ところがいま、原始反射が残存している子どもが増えています。たとえば、「大きな音や突然の光に過剰に反応してしまう」「うるさいところが苦手」という子どもは珍しくありません。
“落ち着きがない”のは反射のせい
ドアをバタンと閉めただけでビクッとする、雷の音が苦手、運動会のピストルの音が怖くて逃げ出してしまう……。親から見ると、臆病な子、緊張しやすい子などと思ってしまいがちですが、実はこれらも原始反射の中の「モロー反射」の残存がかかわっている可能性があります。
つまり、過剰に反応してしまったり、怖がったりしてしまうのは、子どもの意志や性格ではなく、反射が起きているせいかもしれないのです。本人の意志にかかわらずモロー反射が出て勝手に反応してしまうから、子どもはその対応に追われてしまいます。人の話を静かに聞いている場合ではありません。そのため、原始反射が出てくると、授業中の先生の話に集中できない、落ち着きがない、とされてしまうことがあるのです。
「モロー反射」は、大きな音を立てたときなどに、赤ちゃんがビクッとして両手を広げて抱きつくような動きをする反射です。この反射が残っていると、音や光に敏感になる、緊張しやすい、不安感が強いなど、あらゆるストレスに弱くなることがあります。