「子供の困った行動」と「反射」の関係
そのほかにも、子どもの困った行動や癖と原始反射はかかわっています。その原因や解決策は本書のPart2で詳しくご紹介しますが、ここでは、本書に登場する原始反射と、それが残存している場合にどんなことが起こるのか、いくつか例を挙げておきましょう。
●あごを上げると腕が伸びて脚が曲がる反射(対称性緊張性頸反射・STNR)が残っている
→座る姿勢が悪くなる、黒板の板書が苦手。
●脊椎の片側をなでると、刺激があったほうに肩や腰がくっついてしまう反射(脊椎ガラント反射・スパイラルギャラント反射)が残っている
→おねしょが長引く、集中力がない。
●手のひらを刺激すると、ぎゅっと握る反射(掌握反射、または把握反射ともいう・パーマリフレックス)が残っている
→手先が不器用、鉛筆をうまく使えない。
●赤ちゃんの口元を指でやさしくつつくと、おっぱいをさがすような動きをする反射(探索反射・ルーティング反射)が残っている
→偏食、滑舌が悪い、発語トラブルがある。
●頭を左右のどちらかに向けると、同じ側の腕と脚が伸び、反対側の腕と脚が曲がる反射(非対称性緊張性頸反射・ATNR)が残っている
→字が上手に書けない、クロスする動き(テニス、ダンスなど)が不得意、計算ミスをしやすい。
●頭を前に曲げると全身が前屈し、頭を後ろに反らすと全身が伸びる反射(緊張性迷路反射・TLR)が残っている
→乗り物酔いしやすい、黒板の板書が苦手、バランスが悪く転びやすい。
●足の裏の外側をこすると、足の親指が甲側に反り返る反射(バビンスキー反射)が残っている
→足が落ち着かない、かかと歩きやつま先歩きをする。
●ママの乳首など、口に入ってきたものを強く吸う反射(吸啜反射)が残っている
→おしゃぶり癖、爪を噛む癖がある。
●恐怖を感じると動けなくなる反射(恐怖麻痺反射)が残っている
→音や光に敏感、ストレスに弱い、失敗が怖い、うまくいかないと癇癪を起こす。
また、原始反射が残っているお子さんは、ビジョン(視覚)がととのっていないことがあります。厳密には原始反射とは違いますが、原始反射をととのえながら、ビジョントレーニングをすることがあります。
目を動かすことで目の3つの神経、動眼神経、滑車神経、外転神経を刺激します。この神経の起点となっているのが脳幹にある中脳で、原始反射と起点が同じなのです。ビジョントレーニング(編集部注:目を動かす運動)をすると中脳に刺激を与えることになり、原始反射の統合に有効だといえます。