※本稿は、西成活裕『東大の先生!文系の私に超わかりやすく算数を教えてください!』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
掛け算とは、超効率よく足すこと
【西成先生】今回は掛け算をやりましょう。説明のために式を書いておきます。
【西成先生】このような式を使うのは、こんな状況ですかね。
・3匹のイヌがいる。それぞれのイヌは足が4本ある。足の数の合計はいくつか?
・月3回のレッスンを4カ月受けた。ぜんぶで何回レッスンを受けたか?
【西成先生】3個というカタマリが4セットあるときの合計を知りたい。こんなときに使います。では掛け算自体はどんな命令かというと、さっきの式でいえば「3を4回足せ」という命令です。
【郷さん】え?
【西成先生】「『掛ける』って書いてあるのに『足す』ってどういうことやねん!」と思うでしょうけど、数学の世界で「掛ける」とは、「ある数を、ある回数だけくり返し足せ」という意味なんです。だから「3×4」は「3+3+3+3」とまったく同じ意味。答えは12になります。
九九は掛け算の入門ではない
【西成先生】3を4回足すのは頭の中で計算できますね。でも、「9を8回足せ」とか、「2980を543回足せ」になると大変です。そこで昔の人がいいアイデアを思いついたんです。「毎回足すのは面倒くさい。だったら1から9までの数同士の組み合わせを丸暗記すればいい。81パターンならなんとかなるだろう」って。いわゆる九九のことです。
【郷さん】画期的な方法を思いついたとかではなく?
【西成先生】暗記という力業にすぎないんです(笑)。でも、こうやって81パターンの掛け算を暗記したり、あらかじめメモをしておく方法が広まったことで、そろばんや筆算を使ってどんなに大きな数でも掛け算ができるようになったんです。これは革命的な出来事です。
だから九九って「掛け算の入門」みたいな位置づけでは決してなくて、掛け算の本家本丸です。昔の人からすれば「え? なんでこの計算を暗算できるの? 超天才!」みたいなことを、2年生でやっているんです。
【郷さん】そういう経緯だったんですね。
【西成先生】掛け算は「乗算」とも呼ばれ、乗算の結果のことを「積」といいます。堅苦しい言葉ですけど問題文で使われるのでぜひ覚えておきましょう。乗算記号は「×」と書きます。この記号の意味は「ある数をある回数分足せ!」です。英語のxではないですからね。パソコンで「かける」と入力して変換すればでてきます。ちなみに小学校時代に散々使うこの「×」、中学に入ると「できるだけ省略しろ」といわれます(笑)。