誰も完成を信じなかった
中国のAIスタートアップ企業「DeepSeek」が、最新の人工知能モデル「DeepSeek-R1」を開発。米OpenAIの最新モデル「o1」と同等の性能を持つAIを、競合他社の10分の1以下のコストで開発することに成功し話題を呼んだ。
DeepSeekを設立したのは、投資ファンド「ハイ・フライヤー」の創業者リャン・ウェンフォン氏だ。リャン氏は2021年の時点で、独自のAI開発を見据えてNVIDIAのグラフィックス処理装置(GPU)を数千基単位で購入し始めていた。
英フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、業界関係者は当時、「新しい趣味を探している億万長者の風変わりな行動」と揶揄したという。リャン氏のビジネスパートナーの一人は「最初に会った時、ひどい髪型の典型的なオタクで、1万個のチップクラスターを作って独自のモデルを訓練すると話していた。私たちは誰も、彼を真剣には受け止めなかった」と振り返る。
その後わずか数年でDeepSeekは、OpenAIやMetaなどの対抗馬に成長。アメリカ企業によるAIの牙城を突き崩す、中国企業による技術革新の代表例として、世界的な注目を集めている。
月額3万円に匹敵する回答品質を無料で使える
米CNETは、DeepSeekを実際に検証。高額な有料サービスと同等の性能を無料で実現したと報じている。
OpenAIが月額200ドル(約3万円)で提供する高品質の有料プラン「ChatGPT Pro」に匹敵する能力を持つという。高度な情報処理である「推論」機能を、無料のオープンソースAIとして提供している点で傑出しているとの評価だ。
CNETの記者が1週間の検証を実施したところ、従来型AIとは一線を画す処理能力が確認された。記者は「ChatGPT-4が文章の高度な自動補完といった印象にとどまるのに対し、DeepSeek-R1は情報を分析した上で独自の結論を導き出せている」と評価している。
この性能の違いは、実務での検証でも裏付けられた。例として、動画共有アプリ「TikTok」の投稿管理方針(モデレーション・ポリシー)に関する記事を書くため、予備調査として検索を実施した。ChatGPT-4でも同様の検索は可能だったものの、DeepSeek-R1の方が「情報の正確性が高く、複数の情報源を効果的に整理できた」とCNETの記者は評価している。